日本の漫画・アニメから見た「ソ連崩壊」 「謎めいた悪役」扱いの過去も...30年でイメージ激変

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ソ連の魅力は「いびつさ」「アンバランスさ」

   ――津久田さんは1991年の5月にソ連にも行かれたことがあるそうですが、実際現地を見てどんな国でしたか?

(津久田)「『案外普通の国だったなあ』とも感じました。同年夏にはクーデターが起きたばかりのウラジオストクにも行くことができて、グループで自由に旅することができました。ゴルバチョフのペレストロイカ前は基本的に団体ツアーのような形でしか旅行はできませんでした。
そして91年12月にソ連は崩壊してしまいますが、蓋を開けたら情けない国だったかもしれません。基本的に冷戦時代、西側の人々はソ連が見せたいものしか見ることができませんでした。しかし崩壊するとベールが取り払われ、90年代には経済も低迷します。
フィクションでの描かれ方も、ソ連時代は謎めいた、でも格好いい存在だったのが、崩壊後は『ソ連の兵器が紛争地域に流出』といった設定がしばしば使われて厄介事を振りまく存在のようになってしまいました。マンガ『BLACK LAGOON』作中でもそうでした」

   ――その「BLACK LAGOON」や「ガールズ&パンツァー」のように、ソ連のミリタリーに影響された作品も日本では珍しくなくなりました。

(津久田)「冷戦時代は日本も含めた西側が描くソ連はやはり『悪役』であることが多かったですが、当時とは隔世の感がありますね。日本のアニメ・マンガに出てくるロシア人といえばかつては『ゴルゴ13』シリーズの敵役だったり『ルパン三世』に登場する怪しいキャラクターだったりしたのが、近年では『ユーリ!!! on ICE』のスケーターだったりしますから。
まずゴルバチョフのペレストロイカでイメージが変わり、00年代には草の根レベルで人同士の交流が増え、プーチン大統領がネットミーム化するといった出来事を経て、今の私達が抱いているロシア観になったのかなと思います。ロシアでもソ連を知らない若い世代が、ごく普通に日本に興味をもって日本で活動してくれるようにもなりました」

   ――最後にもういちど、1991年12月25日のソ連崩壊から30年になりますが、ソ連の社会や文化を長年調べてきた津久田さんにとって、この国の面白さをまとめると何と言えるのでしょうか?

(津久田)「『いびつさ』でしょうか。決して貧しい国だったわけではなく、知的エリートは宇宙・数学・コンピューターなど特に自然科学ではすごいことをやっている。しかし科学大国なのに市民はパンを買うために行列を作ったり納期を待たされたり、インフラは古く非効率なので電力不足に悩まされた国でした。
また冷戦で周りが全部敵という事情に加えて大国のプライドもありましたから、国内ではモノが不足しているのに『ソ連は力強くて豊かな国なのだから貧しい国に援助するのが当たり前だ』とアフリカやキューバなどに律義に援助をしている。映画で知った表向きの格好よさ、冷戦時代の謎めいたイメージに加えてこんなアンバランスなところもソ連の特徴で、そこに私も含めて惹かれる人は今もいるのかなと思います」
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