小田急ロマンスカーが「観光列車」でなくなる日 展望車VSEの「早すぎる引退」に見た変化

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伝統の連接構造がアダに?

   VSE引退の一因と考えられるのは「ホームドア」と「連接構造」である。小田急は主要駅へのホームドア設置を進めているが、VSEは一般車や他の特急車両とドア位置が合わないのである。

   NEWSポストセブン(12月19日)や東洋経済オンライン(12月21日)の記事によれば、小田急CSR・広報部はVSEの引退にホームドアの問題は関係がない、と両メディアに回答している。

   ただ、鉄道ライターの枝久保達也さんは次のように指摘する。

「VSEは連接構造で1両当たりの長さが短く、ドア位置が異なります。長らくロマンスカーに連接構造を採用してきた小田急ですが、VSEのデビュー時にも現在ホームドアの導入がここまで進むことは想定外だったと思います」

   連接構造とは車両と車両のつなぎ目に台車を設ける構造で、車両同士を完全に独立させて連結器でつなぐ一般の車両とは構造が異なってくる。このためVSEは他形式に比べ1両当たりの長さが短くドアの位置・数も異なってくる。かつて運行したNSE・LSE・HiSEも連接構造だったが、小田急の現役車両の中では、連接車はこのVSE2編成だけという特殊な存在になってしまった。VSE以外のEXE・MSE・GSEは一般車と同じ構造で、VSE退役後は小田急の連接車の歴史が一旦途絶えることになる。

「沢山の車両の中で1形式だけ特殊な構造がありますと車両保守の側では非効率になります。まだ車齢に余裕があってリニューアルや機器の調達は可能であるのにあえて退役させることと小田急のホームドア事情を鑑みると、VSE引退は既定路線だったのかもしれません。リニューアルして延命させることと効率性を天秤にかけて、延命のメリットがないと判断されたのではないでしょうか」(枝久保さん)

   2022年度は町田・海老名など特急停車駅でもホームドア設置が進む計画だ。

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