崩壊30年も...なお消えぬ「ソ連の残影」 プーチン体制が象徴するトラウマとプライド

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ドイツにもアメリカにも劣勢で張り合うしかなかった

――そのようなソ連兵器は、どんな思想に基づいていたのでしょうか

「『常に自分たちより優勢な敵と対峙してきた』のがソ連です。西ヨーロッパに比べれば工業力で劣り革命後にすぐ干渉戦争を経験し、第二次世界大戦でもナチスドイツと戦火を交えましたが、もともと平時の常備軍同士でもドイツに分がある上に、ソ連はスターリンの大粛清で軍の質に問題があった。冷戦で対峙したアメリカにも技術力・経済力で劣っている状況で張り合わなければいけない。そういう状況下では相手と同じことをしない、相手が100点の戦力でこちらが60点しかないなら60点なりにできることをやるしかない、という考え方です」

――具体的にどんな成果があったでしょうか?

「例えばトハチェフスキー(ソ連元帥)の縦深打撃理論や作戦術の概念は、今でも世界の軍事史に残るイノヴェーションとされています。また80年代に米レーガン政権がソ連のミサイル迎撃のために宇宙兵器で防衛網を構築する『SDI構想』を公表した時には、ずっと低コストでローテクな方法でSDIを無力化する「非対称措置」の概念が生まれました。結局SDIは実現しませんでしたが、技術で張り合おうとせずに身も蓋もないけど確実なやり方をソ連は選ぶことがあるんですね」

――すると、質の劣勢を手段で補おうという印象を受けます

「兵器に限らないロシアの特徴かもしれません。ロシアが人命や国際的な道義を無視した手段に訴えると、アメリカ流の合理主義的価値観やテクノロジーが通用しないことがあります。これは前出のクリミアやシリア内戦においてもそうでした。クリミアでは親露派の活動を利用し、さらに民兵組織をロシアから送り込んでウクライナから切り離すことに成功しました。このような戦略が正規軍の動員や精密兵器よりも効果をあげる局面もあるのです」
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