崩壊30年も...なお消えぬ「ソ連の残影」 プーチン体制が象徴するトラウマとプライド

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ソ連の珍兵器「地面効果翼機」って何?

――小泉さんは現代ロシア外交を研究されていると共に「ユーリィ・イズムイコ」のハンドルネームで軍事に関する情報発信もされています。軍事オタクとなったきっかけはソ連だったそうですね。

「私が中高生の頃がソ連崩壊直後で、ベールに包まれていたソ連兵器の実相が明らかになってきた時代です。資料が公開されたり、軍の内部にいた当事者たちの情報が得られるようになりました。ソ連が軍事的脅威でなくなったことも大きく、さらに近年はネットの進歩でロシア語の情報も自動翻訳でわかるようになりました」

――ソ連の兵器は西側と比べてどんな点が特徴的なのでしょう?

「私が衝撃を受けたのが地面効果翼機のVVA-14という実験機です。普段は水上に浮いているのですが、海面スレスレの低空を飛行できる水陸両用機でした。このデザインがとてもインパクトが強く、太い胴体に太く不格好なエンジンが付く昆虫か宇宙人のような印象です。高校生の時に雑誌の表紙で見て『なんなんだこれは』と衝撃を受けました。
   地面効果翼機は船舶のアレクセーエフ設計局と航空機のベリエフ設計局が並行して研究していたのですが、VVA-14はベリエフの案です。ユーゴスラヴィア生まれのヴァルティーニという人物が設計したという点も国際色を感じましたし、アレクセーエフ設計局の「空とぶ船」は重量500トンもあって「カスピ海の怪物」と呼ばれました。ただ怖い、よくわからない国というイメージでいたのが、こんな面白いものが作れるのだ、とがぜん興味がわきましたね」
これが現在モスクワ郊外に放置されているVVA-14(Jno撮影、Wikimedia Commonsより)
これが現在モスクワ郊外に放置されているVVA-14(Jno撮影、Wikimedia Commonsより)

――「地面効果翼機」というのは初めて聞きました。超低空を飛び重量物を搭載できる航空機とのことですが、ソ連ではカスピ海・黒海で実用化例もあるそうで、西側ではちょっと考えられない発想を実現してしまうのがソ連のようですね

「そうかと思えば、戦闘機Su-27のようにスマートで美しいものもつくってしまうのがソ連です。そんなアンバランスさに興味を持って軍用機からロケット、核ミサイルとのめり込んでいきました」
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