時代とともに消えていくジャズの店
シャルマンは、多くのジャズ喫茶が消えていった中で残った珍しい店だった。坂下さんによれば80年代、アナログからデジタルが主流になりCDが広まったころ、ジャズが衰退すると同時にジャズ喫茶も減っていったという。バブル期に土地を手放す店も多かったそうだ。
「シャルマンは一等地でなかったので持ちこたえられたのでしょう。この周辺はお寺が地主で、昔ながらの街並みが残っていました。
しかしお寺が何らかの事情で土地を手放し、再開発が進んでいます。この周辺も地上げにあい、シャルマンの入っているビルの大家さんも売る判断をしました」
石岡オーナーは「まさか自分の代でつぶすことになるとは」とこぼした。店を続けたい気持ちはあるものの現実的には厳しいという。
「移転先を探すのも厳しく、このままでは廃業することになります。クラウドファンディングなどは考えていません。クラウドファンディングを実施するなら人々に何かしら返さなければいけませんが、返せる当てがありません。本業ではないところでリスクは負えません。家計にも負担はかけられない。続けたいけれども、そういうことはできない」
こうしてシャルマンは、66年の歴史に幕を下ろすことになった。店がなくなってしまうと、約8000枚のレコードを保管することも困難になる。石岡オーナーは、貴重なものを除いたほとんどのレコードを中古屋に売るつもりだと話した。
しかし常連たちは、レコードコレクションとシャルマンの歴史などを残していきたいと考えて動き出している。