現存する中では東京最古といわれるジャズバー「モダンジャズシャルマン(以下シャルマン)」が2022年1月29日に閉店する。創業当時とほとんど変わらない佇まいで、8000枚に及ぶレコードを昔ながらの再生環境で奏で続けていた。
国内外の多くのジャズ好きに愛される店だが、入居している物件の都合で閉店を余儀なくされた。店主や常連たちは、移転などの形で店の存続を望んでいるが、目途はたっていない。
J-CASTニュース編集部は2021年12月中旬、西日暮里にある同店を訪れた。
著名なアーティストも訪れた歴史的な店
JR日暮里駅北口にある「夕やけだんだん」と呼ばれる階段を下ると、谷中銀座商店街の手前のビルから往年のジャズが漏れ聞こえてきた。音源に向かい、暗く軋む階段を上ると、こぢんまりとしたスナックがある。1955年創業のジャズバー、シャルマンだ。
オーナーの石岡守之助さんは、レコードを背にしたカウンターで客を待っていた。本業は歯科医で、店を開くのは水、金、土曜日の夜のみ。もともと常連客で、2010年にシャルマンを引き継いだ。
「創業者の毛利好男さんが怪我をして店を売るというので、居抜きで買いました。
私はここでしか飲んでなかったので、この場所がなくなったら居場所がなくなってしまう。飲みに行くところは居酒屋のようなところではなく、リラックスして良い音楽の聴けるところが良いんです」
石岡オーナーが店に出会ったのは約25年前。都内のジャズ喫茶を紹介する本を手に、ジャズを楽しめる店を探し回った。掲載されていた店はほとんど閉店していたが、最後にたどりついたシャルマンだけは音を絶やしていなかった。
全国のジャズ喫茶情報を発信する合同会社ジャズシティ(名古屋市)の楠瀬克昌さんによれば、シャルマンは現存する東京最古のジャズ喫茶(現在はジャズバー)だという。開店当初は1階で喫茶店として営業していたが、その後2階にスナックを開き、80年代以降は2階のスナックのみで営業を続けている。
1961年1月にはアメリカのジャズドラマー、アート・ブレイキー率いるジャズバンド「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」も来店した。
「1961年のアート・ブレイキーの来日は日本にモダンジャズの大ブームを起こしたきっかけとなった歴史的公演です。その際にメンバーが全員訪れたというジャズ喫茶はほかにはなく、このことだけでもこの店が大変な歴史を持った店であると言えると思います」(楠瀬さん)
店内にはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのサイン入りレコードが残されていた。