北海道日本ハムファイターズ・新庄剛志監督の「ビッグボス」旋風が吹いた今オフの日本球界。そんな中、独立リーグ・火の国サラマンダーズ(熊本県熊本市)に所属する、1人の選手が話題を呼んでいる。
名前は、PIG BOSS。"BIG BOSS"ではない。"PIG BOSS"だ。しかも、これが正式な登録名になっている。J-CASTニュースは熊本の「ピッグボス」を直撃。珍奇な登録名になった経緯を聞いた。
「ちょっと、思いついちゃって...」
「経緯、聞きます...?」
火の国サラマンダーズのPIG BOSSこと猪口雄大(いのくち・ゆうだい)選手兼任コーチ(25)は2021年12月15日、J-CASTニュースのオンライン取材に苦笑いを浮かべた。
東海大九州キャンパスから、19年に社会人クラブ・熊本ゴールデンラークスに入社した。チームは今季から「火の国サラマンダーズ」と名を改め、プロ野球独立リーグ「九州アジアリーグ」に参入。自身もプロ野球選手となった。
プロ1年目の今季は38試合に出場し、打率.288、12打点の成績。シュアなバッティングと持ち前の明るさでチームを盛り上げた。
22年シーズンからは内野守備・打撃コーチを兼任することになった。21年12月2日にコーチ就任会見が行われたが、その前日、1つの「アイデア」が脳裏をよぎった。
「ちょっと、思いついちゃって...社長に言ったら、いいね!と言われました」
球団の神田康範社長に提案したのは、「ピッグボス」というキャラクターで会見に臨むこと。ピッグボスは新庄監督の「ビッグボス」と、自身の恰幅の良さを「ピッグ(豚)」にたとえ、掛け合わせたものだ。
「愛称のつもりだったんですけど...」
新庄ビッグボスのように、就任会見を盛り上げたい――。そんな思いで臨んだ会見当日、猪口選手は愕然とする。席に掲示された自身の名前が「猪口雄大」ではなく「PIG BOSS」になっていたのだ。「愛称のつもりだったんですけど...」
さらに、球団は「PIG BOSS」を正式な登録名に設定。公式サイトに掲載されたプロフィールの体重は「86トン」(本来はキロ)になっていた。猪口選手の「思い付き」に、球団も便乗した形だ。
会見ではサングラスをかけ「PIG BOSSです。好きな食べ物は豚丼。来年も元気を出して一生懸命頑張ります!」とアピール。その後はファンやスポンサー向けのクリスマスショーや、児童向けの野球教室にも登場し、熊本の人々を沸かせている。
今では「PIG BOSSって言われたら振り向きます」と、本人もすっかり板についてしまった模様。球団内にはBIG BOSSの略称「BB」を意識してか、「PB」と呼ぶ人もいるそうだ。
サラマンダーズの地元・熊本生まれのPIG BOSS。高校卒業後は首都圏への進学も考えていたが、地元の東海大九州キャンパスへ進んだ。大学2年の16年4月には、阿蘇市の寮で熊本地震を経験。「死んだのかなと思いましたね。揺れて揺れて...裏の崖が崩れていて、寮は傾いていました。めちゃくちゃ怖かったです」と振り返る。
19年に入社したゴールデンラークスでは、野球の傍ら、クラブを運営していたスーパー「鮮ど市場」の鮮魚コーナーで魚をさばいた。クラブが改名し、独立リーグに参入する際、神田球団社長から言われた「チームは熊本の公共財だ」という言葉が、今も胸に残っている。
「みんなはプロに行くためプレーしていますが、僕はずっと熊本で生きてきました。熊本のために野球をすることに、日々やりがいを感じています」
【地域交流活動】
— 【公式】火の国サラマンダーズ (@KpbProject) December 9, 2021
~株式会社 #シアーズホーム Presents~
本日12月9日(木)の野球教室は、幼保連携型認定こども園 #やまなみこども園 に選手、#Sallys がお邪魔させていただきました‼️#火の国サラマンダーズ#PIGBOSS pic.twitter.com/LHiCcnCcpc
今オフはチームから石森大誠投手が中日ドラゴンズの3位指名を受け、NPB入りを果たした。来季からは兼任コーチとして、選手のNPB輩出も目指す。「選手がNPBに行くことで、チームも盛り上がる。そのために、言葉で、背中でみんなを引っ張っていきたいです。名前を売って、お客さんにも入ってもらって、地道にコツコツやっていかないといけませんね」。
本家「ビッグボス」とは、まだ面識がないというピッグボス。会ったら、何を伝えたいか。
「ビッグボスはプロ野球を背負っていらっしゃる。僕は"PIG BOSS"として、熊本の街を盛り上げていきます」
(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)