「じゃ、最後、行ってきます」F1撤退ホンダの新聞広告に感動の嵐 ライバルへ「感謝」伝えた理由

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   ありがとうフェラーリ、ありがとうメルセデス、ありがとうトヨタ...

   2021年12月12日のアブダビ・グランプリ(GP)で、エンジンを供給するレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手(オランダ)が勝利し、F1ラストイヤーで有終の美を飾ったホンダ。最終戦に臨む日の朝、歴戦のライバルに感謝を告げる新聞広告を掲載し、ファンの間で大きな反響を呼んだ。

   広告にはどんな思いが込められていたのだろうか。ホンダに話を聞いた。

  • F1撤退・ホンダの新聞広告が話題に(ホンダ提供)
    F1撤退・ホンダの新聞広告が話題に(ホンダ提供)
  • 英語版の広告(ホンダ提供)
    英語版の広告(ホンダ提供)
  • F1撤退・ホンダの新聞広告が話題に(ホンダ提供)
  • 英語版の広告(ホンダ提供)

「すべてのライバルに感謝します」「すべての仲間に感謝します」

   ホンダは1964年にF1初参戦。以降、撤退と復帰を重ね、15年にはエンジンのサプライヤーとして4度目の復帰を果たした。第4期ではマクラーレン、トロ・ロッソ、レッドブル、アルファタウリといったパートナーとタッグを組んできたが、ホンダの2050年カーボンニュートラル実現を理由に、21年シーズンでのF1撤退が決まっていた。

   F1ラストゲームとなるアブダビGP決勝を控えた21年12月12日の朝。ホンダは日本経済新聞に広告を掲載した。ピットで出走を待つマシンの姿とともに、こんな文章が添えられていた。

「ありがとうフェラーリ
ありがとうロータス
ありがとうブラバム
ありがとうマクラーレン
ありがとうウィリアムズ
ありがとうルノー
ありがとうメルセデス
ありがとうトヨタ」
「初めてF1に挑戦した
1964年のあの日から今日までの、
すべてのライバルに感謝します。
すべての応援してくれた人、
すべてのドライバー、
厳しい戦いをともにくぐり抜けてきた、
レッドブル、アルファタウリ、
すべての仲間に感謝します。」
「じゃ、最後、行ってきます。」

「競い合ってきた彼らの存在無くして...」

   歴戦のライバル、そして仲間への感謝。文末に添えた小粋な「じゃ、最後、行ってきます」のメッセージ。この広告はホンダが公式SNSにも投稿し、「胸熱」「カッコ良すぎる!」「この広告は泣ける」とファンの間で話題を呼んだ。ツイッター上では、広告を額に入れて保存したというファンもいた。

   本田技研工業(東京都港区)広報部のモータースポーツ担当者は14日、J-CASTニュースの取材に「ファンの皆さまから大変反響をいただき嬉しい限りです」と喜びを口にした。

   なぜ、ライバルへの「感謝」を伝える広告にしたのだろうか。担当者は次のように説明する。

「F1に挑戦する理由は単にレースに勝利して名声を得ることだけではなく、世界の頂点を目指していく過程でヒトと技術を磨くことにあります。実際にライバルメーカーたちと切磋琢磨する中で鍛えられたヒトと技術を製品開発に生かすことで、これまでHondaは成長してきました」
「競い合ってきた彼らの存在無くして、Hondaがお客様の喜びの実現を目指す存在になることは出来なかったと考えています。こういった背景より今回このような『感謝』を伝える内容とさせていただきました」

日本語版と英語版、異なるメッセージ

   12日にはホンダF1の英語版公式SNSにも広告が投稿された。内容は日本語版を単に和訳したものではなく、英語版オリジナルのメッセージだ。

「Thank you MERCEDES
Thank you FERRARI
Thank you MCRALEN
Thank you ALPINE
Thank you ASTON MARTIN
Thank you WILLIAMS
Thank you ALFA ROMEO
Thank you HAAS」

   日本語版ではロータス、ブラバム、トヨタなどすでにF1から撤退したチームにも「ありがとう」と伝えていた。一方、「Thank you」を伝えた英語版では、今シーズンのライバルチームの名前が挙がっていた。

   前出のホンダ広報担当者は、日本語版では「HondaがF1に参戦してきた歴史的背景も伝えたかった」とし、ホンダが参戦した64年以降のコンストラクターズチャンピオンを中心に表記したと説明する。

   日本語版では「じゃ、最後、行ってきます」で締めくくられた広告。英語版は、こんなメッセージで終わっていた。

「And now it's time for one last dance.」(さあ今、ラストダンスの時間です)

「ありがとう」伝えたライバルからの「返事」

   ファンに「ラストダンス」を誓った最終戦のアブダビGP。レッドブル・ホンダのフェルスタッペン選手は残り1周でメルセデスのルイス・ハミルトン選手を抜き、逆転勝利を収めた。ホンダでは91年のアイルトン・セナ選手(マクラーレン・ホンダ)以来の、年間F1王者誕生となった。

   有終の美を飾ったホンダに祝福の声が相次ぐ中、トヨタのモータースポーツブランド「TOYOTA GAZOO Racing」のツイッターは12日に「30年ぶりのワールドチャンピオン!最後まで諦めない素晴らしいラストラン!感動をありがとうございました!!!」と投稿した。ハッシュタグには「ありがとうホンダ」と記されていた。

   広告で「ありがとう」を伝えたライバルからの「返事」。ホンダの広報担当者は「同じ日本メーカーとして世界のレースに挑戦されているトヨタ様から応援いただき本当に感謝しております」と語った。

   ファンから惜しまれつつ、F1の舞台から去ったホンダ。担当者はファンに向けて、こんなメッセージを残した。

「今シーズンでHondaはF1から去りますが、引き続き我々の挑戦は続きます。モータースポーツ活動だけでなく、全てのお客様をワクワクさせる事が出来る存在になれるようにがんばってまいりますので、引き続き応援いただければ幸いです」

(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)

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