垂直尾翼に「金の鶴丸」を描いたデザインが特徴的だった日本航空(JAL)の東京五輪・パラリンピック特別塗装機「『みんなのJAL2020ジェット』3号機」(エアバスA350型機)が2021年12月12日、運航最終日を迎えた。当初は20年春の就航予定だったが、開催の1年延期が決まったことで延期に。大会開催1か月前の21年7月に就航した飛行機だ。
「みんなのJAL2020ジェット」1号機と2号機は、エンジントラブルや整備スケジュールが原因で大会開幕前に運航を終了。全日空(ANA)の飛行機を含めて、3号機がオリパラ塗装機としては最後まで運航が続いていた。羽田空港で行われたイベントでは、機体に描かれた東京五輪に出場した2人が登場。「3年後のパリ五輪にも出場し、このジェットの金の鶴丸のように輝けるよう、頑張っていきたい」と意気込んでいた。
金メダルを胸にかけてあいさつ
3号機は「金の鶴丸」の垂直尾翼に加えて、JALが応援するアスリート16人が機体に描かれ、金色のリボンでつながるデザインが特徴。イベントには、機体にも描かれたJAL所属の戸辺直人選手(陸上男子走り高跳び、29)、加納虹輝選手(フェンシング男子エペ、23)が出席した。
戸辺選手は49年ぶりに決勝進出を果たし、加納選手は団体戦でフェンシングでは初の金メダルを獲得した。戸辺選手は「3年後のパリ五輪にも出場し、このジェットの金の鶴丸のように輝けるよう、頑張っていきたい」と意気込み、加納選手は金メダルを胸にかけながら「(特別機の)ラストデーということで寂しい気持ちもあるが、快適な空の旅をお楽しみいただければ」とアピール。搭乗ゲートで乗客を見送り、記念撮影に応じていた。
イベントは那覇空港行きのJL913便の出発を前に開かれた。搭乗ゲートには特別デザイン機のモデルプレーンが飾られ、10時56分頃、乗客97人を乗せて出発した。折り返し便の那覇発羽田行き、JL912便が特別塗装機としての最終フライトになる。
大会開催が1年延期されたことで、特別塗装機の運航にも紆余曲折があった。特別塗装機の1号機(ボーイング777-200型機)と2号機(同767-300型機)は、それぞれ延期前の日程から数えて開幕500日前にあたる19年4月、1年前にあたる19年7月に就航。いずれも大会のマスコットキャラクター「ミライトワ」「ソメイティ」を大きく描き、20年10月までの運航を予定していた。ただ、20年3月に大会開催の延期が決まったことで、運航期間も延長されていた。
JALもANAもエンジントラブルの影響で...
1号機は大会開幕の5か月も前の21年2月に運航を終えている。米プラット・アンド・ホイットニー(PW)社製のエンジンを搭載したユナイテッド航空機が発火事故を起こし、国交省がPW社製エンジンを積んだ777型機の運航停止を命じたためだ。JALはこれが原因で、777型機の国内線仕様機を従来の予定よりも早い20年度内に退役させている。
2号機は、さらに3か月早い20年11月に通常塗装に戻された。JAL広報部は、その理由として「整備スケジュール」を挙げている。
全日空(ANA)は、日本の代表的風景にテニスやゴルフといった各競技のシルエットをあしらったデザインの「HELLO 2020 JET」(ボーイング777-200型機)の運航を18年1月に始めた。JALと同様のPW社製エンジンの問題で、やはり21年2月に運航を終えている。
20年3月に行われた聖火の輸送でも特別塗装機が活躍した。輸送はJALとANAが共同で担当し、JALが所有するボーイング787-8型機(登録番号JA837J)が特別機に衣替えされた。「TOKYO 2020 OLYMPIC TORCH RELAY」の文字と、聖火リレーの標語「Hope Lights Our Way」が描かれ、機体前方にはJAL・ANA両社のロゴマークがペイントされた。20年5月には元々のJAL塗装に戻されている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)