山手線が「無人運転」になる未来 JR東「輸送システム変革」で何がどう変わるのか

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   JR東日本は2021年12月7日、首都圏の輸送システムの変革を進めると発表した。無線式列車制御システム(ATACS)の導入や自動列車運転装置(ATO)の高性能化、首都圏主要線区でのワンマン運転に向けた準備を進めるという。

  • ATACS導入とATO高性能化が行われる京浜東北線
    ATACS導入とATO高性能化が行われる京浜東北線
  • JR東日本の12月7日の発表より
    JR東日本の12月7日の発表より
  • ATACS導入とATO高性能化が行われる京浜東北線
  • JR東日本の12月7日の発表より

ATACSとATC高性能化は山手線と京浜東北線一部区間から

   基本的に信号などの鉄道保安システムは約150年前に開発された軌道回路を基本としている。つまりレールに電流を流し、走行中の列車の位置を検知する。全国的に長年用いられてきたシステムだが、多くの地上設備が必要となることが課題だった。

   ATACSは無線により列車を制御するシステムだ。従来のシステムでは閉そく区間ごとに設置した信号で列車を制御していたが、ATACSでは列車の間隔に応じて速度を制御。。デジタル無線とコンピュータを駆使し、列車自身が前方の列車の位置を検知し、地上~車上間で双方向にリアルタイムな情報通信を行う。ATACSの導入により、多くの地上設備が無線に置き換わることになる。

   ATACSを活用することにより、山手線などで導入されているATOの高性能化も実施。ATOS(東京圏輸送管理システム)と連携した遅延回復や省エネ運転など効率的な運転が実現する。ATACS導入とATO高性能化は山手線と京浜東北線の大宮~東神奈川間で行われる予定だ。

   将来的には、列車に乗務する係員のみとなる添乗員付き自動運転(ドライバレス運転、GoA3)の実現を目指す。ちなみに完全な自動運転(車内に乗務員なし)は東京の「ゆりかもめ」や神戸の「ポートライナー」をはじめとする一部の新交通システムで実施されている。

首都圏主要線区でもワンマン運転

   首都圏主要線区(山手線、京浜東北・根岸線、南武線、横浜線、常磐線各駅停車など)ではワンマン運転を目指し、実施に必要な車両改造工事や駅設備工事を進める。また一部線区ではATOが導入され、定時制の向上や省エネ運転の実現を目指す。

   スケジュールはATO導入・ワンマン運転は2025~2030年頃、ATACS導入・ATO高性能化は2028年~2031年頃の使用開始を目指すとしている。

   新技術の導入の背景にあるのは、人口減少や働き方改革による鉄道ニーズの減少などがコロナ禍により加速し、固定費の削減が鉄道会社の喫緊の課題となっている点だ。このようなJR東日本の施策は関西などの他地方にも波及するだろうか。

(フリーライター 新田浩之)

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