18歳以下の子どもへの10万円給付で、現金とクーポン併用方式の根本問題が実務へ悪影響している。
10万円給付を5万円現金と5万円クーポンに分けるというのは、自民党と公明党の政治決定によるものだ。これは、現金なら消費に回らず貯蓄になるがクーポンではすべて消費になるとし、消費効果を狙ってクーポンという単純な思い込みから来ている。
現金給付で300億円、クーポン給付で1000億円の事務コスト
この種の議論は、これまで何度も話し合われてきた。内閣府の「地域振興券の消費喚起効果等について」によれば、現金でもクーポンでも消費喚起効果には大差ないので、単に間違って思い込んでいるだけだ。
しかも、現金給付で300億円、クーポン給付で1000億円の事務コストとなると、一度に10万円現金給付金なら1000億円が節約できる。誰でもそう思うだろう。実際、大阪市をはじめとし、多くの自治体でそうした声が出てきた。
これに対し、岸田文雄首相は2021年12月8日、国会で10万円現金給付も可能とし「地方自治体の意見を聞きつつ具体的な運用方法を検討していく」と表明した。
しかし、松野博一官房長官は同日午前、現金10万円一括給付について、「現金とクーポンはそれぞれ別の給付措置。(現金一括で)同時に支給することは想定していない」として消極的な姿勢だ。さらに、「地方自治体は政策的意義を理解する中で(クーポン分は)まずはクーポンを基本として検討いただきたい」と要請した。
松井一郎大阪市長は8日、全額現金ならクーポン分を財源措置しない可能性が、内閣府とのやり取りで示されたと説明した。一方、その後同日午後、磯﨑仁彦官房副長官は会見で「その内容については承知していない」とした。もし松井市長の発言内容が事実であれば、これは国による地方自治体への脅しにも近いやり方だ。
政策効果のない無駄遣いを許すのは愚の骨頂
しかし、今回の給付事務は、法的には国の関与が強い法定受託事務でなく、自治事務と思われる。であれば、国のいうことをきかない場合ペナルティがあったらおかしい。自治事務では、国の関与は助言・勧告、協議、是正の要求までだ。なお、11月19日閣議決定にも「地方自治体の実状に応じて」とある。
今回の補正予算で交付税もあるので、地方自治体が交付税で立て替えしてやると言ったら、どうだろうか。実際、松井市長は、財政調整基金で一時肩代わりして一括現金給付をしたいと言っている。
これは誰にも迷惑をかけないで無駄なコスト(全国レベルでは1000億円)をカットできる方法だが、それでも国はクーポンに固執するのだろうか。
自民党と公明党の面子のために政策効果のない無駄遣いを許すのは愚の骨頂だ。それともクーポンに固執するのは別の理由でもあるのか。臨時国会で徹底的に議論してもらいたい。