「版元として配慮が足りなかったと判断」
企画した樋口さんは、早川書房の社員ではない。早川書房の実施する「第5回ハヤカワSFコンテスト」を長篇「構造素子」で受賞してデビューした作家だ。
なぜ樋口さんがSFマガジンでこの企画を進めることになったのか。取材に応じたSFマガジン前編集長の塩澤さんは、経緯をこう説明する。
SFマガジン2021年6月号に、樋口さんが監修した「異常論文特集」を掲載した。架空の論文形式の短篇を集めた特集で、SF作家・柴田勝家さんの作品にインスパイアされた樋口さんが、同様の作品を読みたいという趣旨のツイートしたことをきっかけに企画された。
この特集は読者から好評で、増刷につながった。これを受けて塩澤さんは、樋口さんに第2弾の特集企画を依頼。樋口さんは今回の企画を打ち出した。塩澤さんは、「既存のタイトルから内容を想像する短篇、という切り口に面白さを感じた」として、この企画を承認したという。
塩澤さんは2021年12月号をもって編集長職を退いたが、この企画は新編集長の溝ロカ丸さんに引き継がれた。