東京五輪男子柔道73キロ級銅メダリストで在日韓国人3世の安昌林(アン・チャンリム=27)が2021年12月5日にSNSを通じて現役引退を表明した。今後は指導者として後進の指導に当たる。
今後は指導者として成長を
安は5日にインスタグラムを更新し、日本語、英語、韓国語でそれぞれ引退することを報告。添付された文章は「みなさんこんにちは!」とのタイトルで始まり、「今年を最後に代表チームから引退します。今まで、携わっていただいた、多くの日本の方々、そして在日同胞の方々に、感謝を伝えたいです」などと記されている。
今後に関しては「Next Vision」と題して綴られており、「次の目標は、指導者としてオリンピック金メダリストを育成することです!これからも、節制、規律のある生活を通して、人として、そして、指導者として成長していきたいです」と意気込みを見せた。
安の引退表明は韓国の各メディアが報じており、「朝鮮日報」は安が所属するチームの関係者の話として、「東京オリンピックを前後して引退時期を決定したようだ。先週所属チームに引退意思を明らかにした」と伝えた。
京都出身の安は幼少時に柔道を始め、高校は神奈川の桐蔭学園高に進学。その後、柔道の強豪・筑波大に進むも14年に韓国の大学に転校した。18年の世界選手権で金メダルを獲得し、韓国代表として東京五輪に出場した。
銅メダル獲得巡り地元放送局が「不適切放送」
東京五輪で安が銅メダルを獲得した試合は、韓国国内で大きな話題を呼んだ。試合を中継した韓国放送局MBCの実況が「私たちが望んでいた色のメダルではありませんが」とコメント。地元メディアによると、視聴者から「不適切放送」など批判的な声が殺到した。
また、安は東京五輪後の8月中旬に韓国のテレビ番組に出演し、これまでの柔道人生を振り返りながら日韓両国で体験した差別を赤裸々に語った。
地元メディアによると、番組の中で安は日本で活動していた時代について韓国籍であるゆえに出場出来ない試合があったとし、選手として目標意識を持つことが大変だったことを明かした。
日本での生活の中で「朝鮮人という言葉をよく聞いた」と言い、在日韓国人を嫌悪する団体による暴動やヘイト発言などについても言及。自身の弟が学校で在日韓国人を嫌悪する団体から罵声を浴びせられたという。
その一方で韓国でも多くのひどい言葉を受けたことを明かしており、「在日(韓国人)ということがより強く感じられたのは韓国に来た時だった」と振り返っている。