岩手県の伝統的工芸品「南部鉄器」をIH調理器で利用できることは、あまり知られていない――。南部鉄器職人の切実な悩みが2021年12月2日、ツイッター上で驚きとともに拡散された。使用や購入を諦めていたユーザーからは歓喜の声も寄せられている。
J-CASTニュースは、ツイートした南部鉄器職人・菊地海人さんに詳しい話を聞いた。
意外と知られていないIH対応
南部鉄器は鉄を素材にした鋳物で、茶釜、鉄瓶(てつびん)、花器などの製品がある。17世紀中頃、現在の岩手県盛岡市を中心に支配していた南部藩主が、京都から茶釜職人を招いたのが始まりと言われ、国の伝統的工芸品に指定されている。
1848年創業の南部鉄器工房「及富」の職人である菊地さんは2日、「鉄瓶がIHで使用可能だと各製造元やお店で積極的にPRしてるはずなんだけど、まだまだ知らない方が多いようなのでバズってほしい」とツイートした。
以前からIH調理器具で使えないと思い込み諦めたという声を耳にしていた。投稿のきっかけは、電気ケトルを誤って火にかけ溶かしてしまったというツイートを見かけたことだった。
「鉄瓶だったらこんなことにはならないのになと思っていたところ、IH対応のお問い合わせがあったので書いてみようと思いました」
投稿はすぐに拡散され、3日17時現在までに2.6万リツイート、6.7万「いいね」を超える大きな反響が寄せられた。工房「及富」への注文や公式サイトへのアクセス数は通常時の2倍に増加したという。
菊地さんは予想以上の反響に驚きながら、こう述べる。
「コロナの影響で南部鉄器業界が冷え込んでいることもありましたのでこれをきっかけに鉄器に興味を持っていただけたら嬉しいです」
南部鉄器の使用感は?
多くの人が南部鉄器をIHで用いることができないと思い込んでしまうのはなぜなのか。菊地さんは「昔の道具というイメージが強いためかもしれません」と考察する。
実際にIH調理器具で用いた使用感については、
「ガス火で使う場合と違い、火の当たる底部分の色変化がしにくいこと、また持ち手があつくなりにくい特徴があります」
と述べた。
ただし強火で使うと変形を招く恐れがあるため、中火以下での使用を推奨している。
一方で、底面積が小さすぎるデザインのものや、底に突起がついているために設置面積が小さいものはIH調理器具で使えない可能性があるとしている。詳細はメーカーや販売店へ確認してほしいとのことだ。
IH調理器具でも用いることができる伝統的工芸品・南部鉄器。菊地さんにその魅力を尋ねた。
「岩手県の伝統工芸品としていまや世界中の方に愛されるものとなった南部鉄器ですが、もっともご注目いただいているのは鉄分が溶出することです。
日常の中に日本に古くからある生活の道具として親しまれており、ファンの年齢層が女性の間で拡大しています。
お茶やコーヒーが美味しくなったと喜ばれます。お湯を沸かすという何気ない日常の一コマに、たのしみを発見できる道具です」
SNS上では今回の投稿をきっかけに「欲しい!」「片付けたけど出そう」といった声が広がっている。
鉄瓶がIHで使用可能だと各製造元やお店で積極的にPRしてるはずなんだけど、まだまだ知らない方が多いようなのでバズってほしい。 pic.twitter.com/ondkaHjLas
— 菊地海人|南部鉄器工房及富 (@kaito_kiku327) December 2, 2021