広島県は2021年12月1日、作成した「働く女性応援よくばりハンドブック」が批判を受けたことを受け、関連のウェブサイトを更新した。
冊子を巡っては、仕事と家庭の両立を「よくばり」とするなど一部の表現が不適切ではないかとネット上で抗議が広がり、30日には知事が釈明する事態となった。
サイトの更新について、県はJ-CASTニュースの取材に「広島県の目指す姿を踏まえ、働く女性、働きたい女性を応援する目的で作成していることを追記しました」とする。
批判が寄せられた冊子の内容
冊子は27日、県がツイッターで周知したことで注目が寄せられた。2014年に作られ、法改正に伴い3度改訂している。最新版は仕事と家庭の両立をめざす「ワーキングママ」のための情報などが50ページでまとめられている。
ネット上では支援制度を紹介する項目はわかりやすいと評価された一方、仕事と家庭の両立をめざすことを「よくばり」と表現するのは適切でないとして、「子育てしながら働くことは、女性のわがまま、欲張りなことなんですか?」などの抗議の声が集まった。
さらに「ワーキングママの心構え」を記した項目も「全然応援してない」などと波紋を呼んだ。仕事と家庭の両立には周囲の協力が欠かせないとしたうえで、「ワーキングママ」に不満を寄せるようなセリフが次のように掲載されていた。
「短時間勤務と休日出勤免除を希望されたけど、その分子どものいない社員の負担が増しているみたい。休日出勤が増える他の社員や、会社の経営状況も理解してほしいな...」(上司)
「『私ばっかり家事と育児をしている』というけど、こっちだって仕事で疲れてるんだよね。夜泣きがうるさくても我慢してるし、多少は手伝っているんだから、勘弁してほしいな...」(パパ)
周囲の理解を得るには感謝と配慮が大事であると強調し、それぞれ経験者の助言を添えた。
「ついつい『頼みやすい人』にカバーをお願いしがちですが、同じ人ばかりにカバーをお願いするのは不満のもと。同僚の負担を軽減するための方法を、上司と一緒に考えましょう」(管理職ママ)
「『お願いは時間を区切って具体的に』『手伝ってもらったことにダメ出しはしない』が、わが家のルール。ちょっと大げさに感謝すると、パパもやる気を出してくれます」(新米ママ)
サイト更新で趣旨追記
県の働き方改革推進・働く女性応援課は30日、J-CASTニュースの取材に、
「趣旨が十分に伝わらず、不快に感じられる方がいることを真摯に受け止め、働く女性を応援するという県の趣旨が十分に伝わるよう内容の見直しを図っていきたいと考えています」
と答えていた。「よくばり」という言葉は県が15年から掲げている総合計画の「仕事も暮らしも。欲張りなライフスタイルの実現」という文脈に基づく前向きな表現だと説明した。
趣旨は「男性・女性に関わらず県民一人一人が、仕事も暮らしも、どちらも諦めることなく、自らの希望を叶えることのできる社会」を目指すというものだ。
「ワーキングママの心構え」は、「仕事と育児や家事との両立について、好意的な意見だけではなく様々な考え方がある」ことを踏まえて制作したとする。
同日には湯崎英彦知事も記者会見で、「女性向けのハンドブックだったのでそこだけ切り取られると、『女性』がそういうふうに『よくばり』なんだと誤解を生んでいるのかなと思っています」と言及した。
冊子の電子版を配布するページは12月1日に更新された。県の担当者は2日、変更点を次のように説明する。
「ハンドブックの作成趣旨として、仕事と暮らしのどちらかをあきらめるのではなく、県民ひとりひとりが、どちらにおいても希望を叶えられる社会を実現するという、広島県の目指す姿を踏まえ、働く女性、働きたい女性を応援する目的で作成していることを追記しました」
冊子の改訂については「社会状況等の変化や今回いただいた様々なご意見も踏まえ、今後内容の見直しを図っていく予定です」と答えた。