アニメ「名探偵コナン」(読売テレビ・日本テレビ系列)の2021年11月27日放送回が注目を集めている。
この回は推理パートで犯人と「毛利小五郎」が脈絡なくワルツを踊り出すなど全体的に混沌としていた。なかでも、事件の被害者が「キッチンシンクに溜めたあんこ」に頭を押し付けられ死亡した状態で発見された場面は大きく話題になった。
放送内容に「カオス過ぎ」という声もあがるなか、老舗和菓子屋からまさかのツッコミが入った。シンクにあんこを溜めるとどれだけ危険なのか、専門家目線で冷静な分析を寄せたのだ。
27日に放送されたのは、「1028話 ケーキを愛する女のバラード」。話題となった「シンクにあんこ」のシーンについて、作中では捜査にあたった警部らが、
「常軌を逸した犯行だな。仏さんは大量の汁粉でも作っていたのか?」
「洋菓子工場の社長でありながら最近は和菓子作りに凝っていたようですな。自分の作ったあんこで殺害されるとは...」
とコメントしていた。
こうした犯行の手口に1852年創業の和菓子屋「松葉屋」(石川県小松市)が反応した。銘菓「月よみ山路 栗蒸し羊羹」で知られる同店は、「通りすがりの和菓子屋です」と名乗り、ツイッターで次のように指摘した。
「あんこって結構質量あるので、シンクいっぱいにするまで溜めこむと重さでシンクが歪みそうなのと...あとは『溺れて』とのことなので冷えて凝固する前の、柔らかい状態のあんこだとするとかなり熱いと思うんですよね...火傷が心配です」
思わぬところに注目した松葉屋の投稿は3万3000件以上のリツイート、8万3000件超の「いいね」が寄せられるなど反響を呼んでいる。ツイッターでは「プロ視点で真面目に考察してて面白いw」「色々突っ込みどころありすぎ...笑」といった声が寄せられた。
松葉屋のツイッター担当者は29日、J-CASTニュースの取材に「何気ない投稿でしたが、予想外の反響をいただき驚いています」と答えた。もともと作品のファンであり、今回の事件が和菓子屋として親近感のある内容だったことから投稿に至ったという。
作中の「シンクに溜めたあんこ」の重量はどれほどになるのか。担当者に聞いたところ、成人男性2人分以上の重さになると推測した。
「アニメの中で被害に遭った成人男性の体格と比べてみてもかなり大型のシンクに見えましたので、幅を1メートル、奥行きを50センチ、深さを20センチのシンクだとして、10万立方センチメートルつまり100リットルの容量があるとしました。
あんこの比重は水1.0に対して1.47前後なので単純計算で100リットルの容量のシンクには147キログラム以上のあんこが詰まっていることになるかと思います」
また「水回りの専門家では無いのですが、壊れそうで心配です」と述べつつ、あんこの比重は「こしあん」か「つぶあん」か、また水分量や小豆の種類などに応じて多少変化するとも補足した。
続けて「かなり熱いと思う」と指摘した「あんこ」の温度に関しては、「水は100℃で沸騰しますが、実はあんこは100℃以上まで温度が上がります」とする。そのうえ粘度が高いため、非常に熱が冷めにくいと解説した。
「実際に私自身も仕事で慣れないうちは火傷することも珍しくありませんでしたし、職人さんの中には火傷の跡が残っている方もいらっしゃいます」
投稿の反響は大きく、店にも良い影響があったという。担当者は次のように感謝を伝えていた。
「ツイートを見て来店された方や、通販で購入してくださった方までいました。アニメの中では凶器として使われたあんこですが、形はどうあれこうして弊社を知っていただける機会になったのは、和菓子屋として嬉しくあります。
弊社も凶器としてではなく、美味しい銘菓として、皆様に喜んでいただける羊羹づくりを心がけて行きたいと思います」