仕事と家庭の両立は「欲張り」か ワーママ応援冊子に批判...広島県が見直しへ「趣旨十分伝わらず」

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   「仕事も暮らしも。欲張りなライフスタイル実現のために」−−。広島県が女性労働者を支援するために発行している冊子が、物議を醸している。

   注目されているのは「働く女性応援よくばりハンドブック」。仕事と家庭を両立しようとすることを「よくばり」とするなど、一部の表現が不適切ではないかとしてネット上で抗議の声があがった。県はJ-CASTニュースの取材に、「働く女性を応援するという県の趣旨が十分に伝わるよう内容の見直しを図っていきたい」としている。

  • 広島県が配布している「働く女性応援よくばりハンドブック」
    広島県が配布している「働く女性応援よくばりハンドブック」
  • 広島県が配布している「働く女性応援よくばりハンドブック」
    広島県が配布している「働く女性応援よくばりハンドブック」
  • 広島県が配布している「働く女性応援よくばりハンドブック」
  • 広島県が配布している「働く女性応援よくばりハンドブック」

「全然応援してないよ」

   同冊子は広島県公式ツイッターが2021年11月27日、無料配布していると周知したことで注目を集めた。発行されたのは14年。20年に改定されている。

   50ページにおよぶ冊子は妊娠・出産に関する各種支援制度を紹介しているほか、仕事と家庭の両立をめざす「ワーキングママ」のための情報などがまとめられている。

   ネット上では各種制度がわかりやすいと評価があがった一方で、仕事と家庭の両立をめざすことを「よくばり」と表現するのは適切でないとして、「子育てしながら働くことは、女性のわがまま、欲張りなことなんですか?」などと抗議の声が集まった。

   内容への違和感はほかにも寄せられた。「ワーキングママの心構え」を記した項目では、仕事と家庭の両立には周囲の協力が欠かせないとしたうえで、現状に不満を抱いている想定の「上司」や「パパ」らのセリフを次のように掲載。

「短時間勤務と休日出勤免除を希望されたけど、その分子どものいない社員の負担が増しているみたい。休日出勤が増える他の社員や、会社の経営状況も理解してほしいな...」(上司)
「『私ばっかり家事と育児をしている」というけど、こっちだって仕事で疲れてるんだよね。夜泣きがうるさくても我慢してるし、多少は手伝っているんだから、勘弁してほしいな...」(パパ)

   彼らの理解を得るには感謝と配慮が大事であると強調し、経験者からの助言をそれぞれ添えた。

「ついつい『頼みやすい人』にカバーをお願いしがちですが、同じ人ばかりにカバーをお願いするのは不満のもと。同僚の負担を軽減するための方法を、上司と一緒に考えましょう」(管理職ママ)
「『お願いは時間を区切って具体的に』『手伝ってもらったことにダメ出しはしない』が、わが家のルール。ちょっと大げさに感謝すると、パパもやる気を出してくれます」(新米ママ)

   これらの表現は波紋をよび、「何でママだけに求められるの?」「全然応援してないよ」「とにかく不快」と批判の声が集まっている。

趣旨が十分に伝わるよう内容の見直しを図る

   批判の声を受けて広島県・担当者は30日、J-CASTニュースの取材に、

「趣旨が十分に伝わらず、不快に感じられる方がいることを真摯に受け止め、働く女性を応援するという県の趣旨が十分に伝わるよう内容の見直しを図っていきたいと考えています」

といい、次のように説明した。

   冊子に用いられた「よくばり」という言葉は、15年に策定された広島県の総合計画「ひろしま未来チャレンジビジョン」の文脈に基づく前向きな表現だという。

   総合計画では「仕事も暮らしも。欲張りなライフスタイルの実現」を掲げている。その趣旨は、

「男性・女性に関わらず県民一人一人が、仕事も暮らしも、どちらも諦めることなく、自らの希望を叶えることのできる社会」

を目指すというもの。これを受けて今回の冊子においても、「女性が仕事も暮らしもどちらにおいても希望を叶えられるように」と「よくばり」という表現を採用したとする。

   前出「ワーキングママの心構え」については「仕事と育児や家事との両立について、好意的な意見だけではなく様々な考え方がある」ことを踏まえて制作したと説明。具体的には、

「女性活躍に関する専門家の意見も伺い、制作業務受託事業者と職員が協議して作成しています」

とする。今後の対応について、担当者は次のとおり伝えた。

「このハンドブックは、女性が仕事と家庭を両立させて働き続ける上で有用な法制度や健康に関する情報などを集約し、活用していただくことを目的としております。

誰もが、諦めることなく自らの希望する働き方・暮らし方を叶えられる社会の実現という趣旨を、今後も丁寧にご説明していきたいと考えています」
(12月2日20時50分追記:冊子の発行年に誤りがあったため、記事の一部を修正しました。)
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