60人分の特大ケーキが無断キャンセルされてしまった。注文を受けたケーキ屋「菓子工房 ラ・ベルージュ」(神奈川県川崎市)は2021年11月29日、このケーキを分割して販売するとツイッター上に投稿した。すると開店からわずか30分で分割したケーキが完売した。
J-CASTニュースは、特大ケーキを制作した同店の製造責任者・原口賢也さんに詳しい経緯を聞いた。
店には特大ケーキだけが残された
原口さんが制作したのは、縦が40センチ、横が60センチ、高さは10センチある特大のショートケーキだ。通常のスポンジや生クリーム、イチゴに加え、喜んでもらおうとサービスでイチゴのジュレやバニラクリームの層も加えたという。ケーキの上にはチョコレートで作った額縁が載っており、客から頼まれたA4サイズの写真がプリントされている。値段は4万8000円。
閉店時刻は19時だが、客の利用希望時刻に合わせて20時にケーキを渡す予定だった。注文代金もこの時に受け取ることになっていた。しかし22時を過ぎても客は訪れず、連絡もなかった。店には特大ケーキだけが残された。
「閉店後、ご利用予定の時刻の直前にケーキをお渡しすることは僕から提案しました。本当はスタッフに迷惑をかけてしまうこともあり、そういう中でお受け取りに来られなかったのは非常に残念でした。
しかし怒る気持ちはなく、お客様にトラブルがあったのではないかと本当に心配しています」
「折角作ったケーキが勿体無い」
原口さんは、特大ケーキを16等分に切り分けデコレーションし直し、サービス価格で販売することにした。分割したとはいえ、1カット4.5号サイズ(直径13.5センチ)もある特大ケーキだ。本来であれば3000円ほどのものだが、1カット1080円(税込)とした。
「少しでも材料代や箱の代金、箱の送料等が戻ってきたらよいなと。そして、何より折角作ったケーキが勿体無い」
原口さんはツイッター上で、こう事情を説明し、分割ケーキの販売を告知した。
「助けてください」と訴えながら経緯を説明する最初のツイートは、投稿から3時間ほどで4000リツイートを超え、30日14時現在までに9000リツイートとなった。原口さんはこうした反響に驚いている。
ダイレクトメッセージやお店の電話にはケーキの取り置きを希望する連絡が相次ぎ、店を訪れる客もいた。
「店には常連さんも訪れてくださりました。お年寄りの方なのでSNSなどは見ていないと思ったのですが、投稿を見た娘さんが『買ってきて』と頼んでくださったようです。本当にありがたかったです」
「信じられないことでした」
ツイートを投稿したのは29日の朝9時頃だが、10時に開店すると30分で完売した。
「そのままでは一個も売れないと思いサービス価格で売ったんですけれども、信じられないことでした」
完売後にも購入しに来た客が相次ぎ、申し訳なさを感じた原口さんはデコレーションケーキなどをサービス価格で販売することにした。赤字の心配はないのかと尋ねると、原口さんはこう答える。
「やはりお電話いただいたり実際にお越しいただいたりするのは本日だけのことですし、売り切れたとだけ伝えるのは申し訳ないので、できる範囲内でやらせていただいております」
原口さんは、店を気にかける人々に対し「本当にありがたく、なにか喜んでもらえる恩返しの機会をもうけたいと思っています」と深く感謝した。
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)
【助けてください(ToT)】
— 【公式】菓子工房ラ・ベルージュ【川崎】 (@laverger1974com) November 28, 2021
おはようございます!実は...先日お客様から60人分の大きなケーキの注文がありました!当日は23時位に御利用という事で、お客様の為になるべく直前のお受け取りの方が宜しいと思い、(通常は19時が最終受け取り時間なのですが)お店閉店の1時間後の20時受け取り pic.twitter.com/UOJ2liSDbJ