朝4時半に起床しているという山田千紘さん(30)。20歳の時に手足を3本失った事故の後、「時間の使い方」が変わっていったという。根幹にあるのは「1日をフル活用したい」という考え。仕事、家事、遊び、YouTube・SNS投稿、夢を叶えるための活動――左手1本の体で全てやっていくには「時間を無駄にしない生活」をする必要があった。
事故の後、「僕は生かされた」という山田さん。時間の使い方に対する考えを語った。
【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)
1日の時間をフル活用したい
会社はフレックスタイム制で、僕は7時に勤務開始しています。以前より1時間半ほど早めました。夕方から夜の時間を充実させるためです。取材対応したり、友達と遊んだり、YouTubeの動画撮影をしたり、仕事以外にも使える時間を確保できます。
朝は4時半起き。僕はもともと起きるのが早かったので、起床を早めるのが苦ではありませんでした。朝から気持ちよく働き、夕方に仕事が終わると、その後料理など家事ができるし、個人的な活動の打ち合わせにも柔軟に対応できます。
根幹には「1日の時間をフル活用したい」という考えがあります。1日をフルで楽しむために、こうした時間管理をするようになりました。
1日24時間はみんな平等です。いつか自分の人生が楽しかったか、辛かったかと振り返る時、1日1日としっかり向き合っていれば、自然と「楽しい人生だ」と思えるようになると思っています。
一生懸命に生きても、辛い日はあるかもしれません。でも次の日「切り替えて楽しい日にしよう」と思って行動できれば、トータルで「楽しい日」の割合は多くなると思います。1週間のうち3日間が辛くても、4日間を楽しくすれば、「楽しい1週間」で終わります。1か月のうち、仕事に失敗したり、失恋したりして、1週間が辛かったとしても、残り3週間をめちゃくちゃ楽しく過ごせれば、その1か月はトータルで楽しく終わります。同じように1年単位、10年単位で楽しく過ごせれば、「楽しい人生」と思えるだろうと思います。
その積み重ねのベースになるのは、1日の時間とどれだけ向き合い、充実させているか、です。10年先のことは分からないけど、そこに向かっていく1日1日を大事に積み重ねていけば、結果として良い方向に向かっていける。そういう考えに至ったので、1日をフル活用する生活を心掛けています。
1日1日を大事にしているのは「生かされたから」
こういう時間の使い方を考えるようになれたのは、事故で手足を失ってからです。
僕は仕事したいし、友達と遊びたいし、夢である「モチベーショナルスピーカー」としての活動も考えたいし、YouTubeやSNSもやりたい。1人暮らしだから、家事も全部やります。この体だから時間がかかる作業はどうしてもあります。それは仕方がないことで、大事なのはそのハンディキャップをどう補っていくか。結果、時間を無駄にしない生活をするようになりました。
手足をなくした直後の入院中は、10年後どころか、明日の自分のことさえ考えることができませんでした。「これからどうなっていくんだ」と、自分の姿を見られなかったし、見たくもなかったし、消えてしまいたかった。
でも、周りの人の助けで少しずつ立ち直り、自分と向き合っていく過程で、やりたい事が出てきました。22歳で同級生が社会人になる時に、自分も社会復帰したいなとか、色々と人生の想像をしていたら、時間の使い方を徹底して組み立てないといけないと思いました。
1日1日を大事にしているのは、「生かされたから」というのも大きいです。死んでいたかもしれない事故から救ってもらい、命の重さを痛感しました。荒んでいく人生ではなく、楽しい人生を送りたい。そして、僕が多くの人に助けてもらったように、僕も誰かのためになりたい。だから今、仕事をしながら、YouTubeやSNSで発信を続けています。
怠けようと思ったら簡単です。仕事が終わったら寝ればいい。でも、僕にとってそれは人生をやめるのと同じくらい辛いこと。今は「生きている」とすごく感じるし、生きるなら楽しい人生、意味を見出せる人生、誰かのためになる人生を過ごしたい。その思いが僕の原動力になっています。
(構成:J-CASTニュース編集部 青木正典)