政府系金融機関の日本政策金融公庫が刊行した冊子「写真の撮り方ガイド 飲食店編」に、SNS上で大きな注目が集まっている。飲食店の売上向上を目的とした写真の撮り方を紹介するもので、売上知識から撮影技術にわたる丁寧な説明が「勉強になる」などと好評だ。
J-CASTニュースは担当者に、冊子を制作した背景を取材した。
コロナ禍で苦慮する飲食店のために制作
「写真の撮り方ガイド 飲食店編」は、日本政策金融公庫国民生活事業本部の生活衛生融資部が制作した小冊子だ。同社の支店窓口で配布されているほか、公式サイト上からPDFでダウンロードすることができる。
2021年11月21日にツイッター上で、「日本政策金融公庫、なかなか良い資料を無料で公開してくれている」などと紹介されたことをきっかけに、撮影技術を向上させたい人や売上の知識を学びたい人の間で大きな注目が集まった。リプライ欄には「ほんとだ、いい資料。説明が易しい」「飲食店に限らず料理写真撮りたい人にめちゃくちゃ良い記事」などと評する声が寄せられている。
同書では、手持ちの道具やスマートフォンなどで簡単に実践できる撮影技術の紹介や、撮影の目的を明確にするための売上知識に関する説明が丁寧に記されている。例えば、売上を伸ばすといっても、新規客数、注文単価、注文数など、何で向上させたいのかを決めると良いという。そのうえで狙いに沿った撮影方法を紹介している。
日本政策金融公庫の生活衛生融資部担当者は、同書の制作で力を入れたことが2点あると取材に明かす。
「1つは、きれいな写真ではなく、飲食店の『売上アップにつながる』写真の撮り方をお伝えすること。もう1つは、(専門的な機材を用いずに)スマホで簡単に撮影できる、実践的なノウハウに絞ってお伝えすることです。
これらの意図を監修いただいた石田先生にお伝えし、何度も打ち合わせを重ねてブラッシュアップしていきました」
監修は、映像を活用したプロモーション改善を手掛ける「フォト・パートナーズ」の社長で、中小企業診断士でもある石田紀彦さんが担当している。
「このような反響をいただけるとは想像していませんでした」
冊子を制作した生活衛生融資部が属する国民生活事業本部は、小規模事業者や創業企業への事業資金融資などを行う部署だ。経営環境の変化や災害に伴う支援を行うことも特徴で、新型コロナウイルス感染症関連の融資なども行っている。
前出の担当者は、冊子を制作した背景をこう説明する。
「弊社では、以前から中小企業の皆さまの経営に役立つ情報発信(出版物の発行、セミナー開催等)に取り組んでいます。本冊子は、コロナ禍の影響で売上確保に苦慮されている飲食店が多いことを受け、少しでもお役に立てればと2020年8月から制作をはじめたものです」
飲食店の売上向上のためには、写真が重要だと考えた。SNSやホームページ、グルメサイト、メニュー表など様々な販促ツールに用いられるためだ。
冊子はSNS上でも窓口でも好評だった。初版は2万部だったが、在庫がなくなってしまったため3万部増刷したという。こうした反響を担当者は喜ぶ。
「このような反響をいただけるとは想像していませんでしたが、弊社の作成した冊子が、飲食店をはじめとする中小企業の皆さまのお役に、少しでも立てているのであれば嬉しいです。制作の励みになります」
今回の「写真の撮り方ガイド」は飲食店向けで、ほかの業種への展開は未定。日本政策金融公庫は写真の撮り方ガイド以外にも、「SNS活用ガイドブック」、「パート・アルバイト定着必勝マニュアル」なども発行しており、引き続き中小企業の経営に役立つ情報発信に取り組んでいくと意気込んだ。