2021年のプロ野球・日本シリーズはここまで全試合2点差以内と白熱した戦いが続いている。11月25日の第5戦は王手をかけられたオリックスが終盤のシーソーゲームの末に9回にアダム・ジョーンズの勝ち越し本塁打で勝利し、ヤクルト3勝・オリックス2勝で地元のほっともっとフィールド神戸での第6戦に望みをつないだ。
第5戦まで全試合2点差以内の決着は64年ぶり。最後まで気が抜けない緊迫した戦いぶりに、他球団のファンも「面白すぎる」と興奮、さらに「史上最高」と評される1992年の日本シリーズに匹敵するのではないかともささやかれ始めた。
初戦でサヨナラ満塁ホームラン、第2戦で西武完封
1992年の日本シリーズはリーグ3連覇中の西武(森祇晶監督)と14年ぶり2回目の優勝のヤクルト(野村克也監督)が対峙。ペナントレースの経緯から下馬評は西武圧倒的有利だったが、第1戦(神宮)は3-3で9回を終え延長戦に入る。12回裏にヤクルトは西武の抑え・鹿取義隆を攻め満塁のチャンスを作ると、代打・杉浦亨が日本シリーズ史上初のサヨナラ満塁本塁打で試合を決めた。
2021年のシリーズ初戦も3-1でリードされたオリックスが9回にヤクルトの抑えのスコット・マクガフを攻め、無死満塁から宗佑磨の同点適時打と吉田正尚のサヨナラ打で4-3の逆転サヨナラ勝ちを収めた。
92年の第2戦は前日とは打ってかわって西武がヤクルトを2-0で完封、西武はエース郭泰源とリリーフエース潮崎哲也の継投でヤクルト打線を3安打に抑えた。
21年もオリックスが勢いに乗るかと思いきや第2戦はヤクルト先発高橋奎二がプロ初完封を遂げる力投で、打線もオリックス宮城大弥からワンチャンスをものにし2-0でヤクルトが勝利した。
後がないヤクルト・オリックスが敵地で接戦制す
第3戦以降も1992年と2021年のシリーズには重なるポイントが見いだせる。
92年の西武は西武球場で第3戦と第4戦を6-1、1-0で連勝し王手をかける。21年はヤクルトが東京ドームで連勝、第3戦は7回裏にドミンゴ・サンタナの値千金の逆転2ランが飛び出し5-4、第4戦は2-1のロースコアでオリックス打線を抑えてヤクルトが王手をかけた。
92年の第5戦、西武に王手をかけられたヤクルトは打線が復活し5回までに6-0とリードするが、5回裏に西武は5点を返し7回裏にオレステス・デストラーデの本塁打で同点に追いつく。後がないヤクルトは延長10回に池山隆寛の本塁打で勝ち越し7-6で勝利した。
21年の第5戦はヤクルトが先制、7・8回にオリックス打線がつながり5-2と勝ち越すも8回裏にヤクルトは山田哲人の3ランで同点に追いつく。山田の一振りで振り出しに戻り、あと1勝のヤクルトに流れが行ったかと思われたが直後にジョーンズの一発で勝ち越したオリックスが9回裏を抑えて第6戦に望みをつないだ。シーズン後半を右肘の手術で棒に振った山岡泰輔が勝利投手になったこともチームとファンに勢いを与えた。
「初戦でサヨナラ勝ち」「第1戦を落とした側が2戦目に敵地で2-0の完封、そのまま3連勝し王手をかける」「第5戦で王手をかけられた側が終盤に一発で勝ち越す」といった展開は92年と21年で酷似しており、ネット上では、
「1992年の日本シリーズを観ているような」
「1992年のような伝説になるやもしれん」
との声も。熱戦ぶりに29年前のシリーズを思い出すファンも増えてきているようだ。
元西武・ロッテのG.G.佐藤さんも第4戦の後に「ホント、1992年の日本シリーズに展開が似てる。ヤクルトが西武側でややこしいけど」、さらに第5戦の直後には「マジここまで92年日本シリーズペース」とそれぞれツイッターに投稿している。
92年の6戦目以降はどうなったか
1992年の第6戦は神宮球場に戻ったヤクルトに対し西武が粘り9回表に7-7の同点に追いつき、10回裏に秦真司のサヨナラ本塁打でヤクルトが逆王手をかけた。第7戦は西武・石井丈裕とヤクルト・岡林洋一の両先発の投手戦で進み、延長10回表に秋山幸二の犠飛で1点を勝ち越すと、石井が裏を抑えて2-1で西武がシリーズを制した。
第7戦を継投せず10回を投げ抜いた石井と岡林はそれぞれシリーズMVPと敢闘賞に選ばれた。西武とヤクルトの戦いは7試合中4試合が延長戦、4試合が1点差で決着がつく接戦ぶりで、森・野村の両監督の采配も見どころで「史上最高」との評価も高い。
第6戦で逆王手を狙うオリックスはペナント・CSを通して16連勝中の絶対的エース山本由伸の先発が確実だが、ヤクルトが日本一を決めるか、オリックスが92年と同じく第7戦に持ち込むか、シリーズが進むにつれ野球ファンの注目は高まっている。
【J-CASTニュース編集部 大宮 高史】