「英霊達が聞いたらどう思われる」 書籍盗難で閉館...軍艦利根資料館を支えたボランティアの無念

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ボランティアによって続いてきた資料館

   岸さんは、自身が管理を始めるまでの経緯をこう説明する。

   資料館は、空襲で亡くなった地域住民や軍艦関係者の名を記した慰霊碑のそばに作られ、地元住民によって管理されてきたと伝えられている。しかし慰霊祭(供養祭)が弔い上げとなった後、その活動は停止した。

「数年前から地元の方がボランティアとして清掃をするようになりました。ただ、ご高齢の為、十分な管理が難しくなり、ボランティアを再度募集していました。
たまたま募集の話を広島市内のボランティアと地元のボランティア(私)が見つけ、お互いを補完するようにして管理するようになりました」

   資料館の鍵は宿泊施設「能美ロッジ」で管理されていたが、施設が閉鎖。続いて管理を担った「シーサイド温泉のうみ」も閉館し、一時は資料館の閉館も検討した。しかし2019年、資料館に自動ドアを導入することで、無人でも開館できるようになり、運営が続けられていた。

   そうした中で起こった書籍の盗難。岸さんは、とても残念だと述べる。

「資料の多くは寄贈によるものであり、それを広く多くの方々に知っていただく機会と場を提供してまいりました。管理側として本音を言えば再開したいのですが、今の体制ではとても難しいと思います」

   資料館は閉館するが、今後も資料の保存は続けていくという。

「軍艦利根資料館のすぐ近くには軍艦利根の戦没者慰霊碑がございます。慰霊碑の前に広がる海は利根の終焉の地です。利根公園を慰霊と供養の場として今後も管理していく所存です。資料館に関しましては残念な結果となってしまいましたが、引き続き資料の保存に努めていく所存です。
『過去を知ることは未来を作ること』に繋がります。このような時代、このような日本になってしまった事、先の大戦で戦った英霊達が聞いたらどう思われるでしょうか?
『本が1冊無くなった。』
小さな事かもしれません。されど今の日本の縮図であると考えます」

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)

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