東京・渋谷の人気カフェ「コーヒーハウスニシヤ」が年内で閉店すると発表した。決断した理由に、ネット上では「つくづく素敵」などと反響が広がっている。
開業は13年9月。西谷恭兵さんがオーナーを務め、「イタリアのバールやフランスのカフェをモデルに、飲食店の姿をした地域コミュニティの場を提供する」ことを目標としていた。
閉店の理由は...「原点に忠実で素晴らしいね」
閉店はインスタグラムとフェイスブックで2021年11月22日に発表された。コロナ禍前から決めていたといい、
「地域の方をはじめ、開業以前からお付き合いをいただいているお客さま、たくさんの新しいお客さまにご利用いただき、これまでお店を続けることができました。本当にありがとうございます」
と感謝を表す。理由については「行列のできるお店」になったことが大きいとする。経営者としては店の盛況を喜びつつ、店員の立場としては苦しみを感じていたことを明かす。
「一人一人のお客さまへ十分なサービスを提供することができず、私の存在意義は何か?と自問自答を繰り返し営業を続けてきました」
行列は近隣の店や歩行者の妨げとなり、利用者からも「いつも入れない」と声があがるなど地域コミュニティの場とは対極の存在となった。営業時間やメニューなどの規模縮小を余儀なくされ、「次第にお店のビジョンが見えなくなっていきました」とこぼす。そのうえで西谷さんは、
「私にとって大切なのは、お店が流行ることよりもお店にスタイルがあり、スタイルを持って仕事をし、それに共鳴してくれるお客さまがいることです。それができなくなってしまった時、コーヒーハウスニシヤの閉店を決めました。
今思えば行列ができるようになってから、一日中お客さまへお詫びとお願いをしていたように思います。正直、それはもうしたくありません」
と伝えた。「残された営業では、一つでも多くの『ありがとう』をお伝えできたらいいなと思います」ともいう。なお、22年1月には新天地で別業態の店を構える予定だとする。
西谷さんの決断はネット上で大きな注目を集め、「原点に忠実で素晴らしいね」「つくづく素敵なお店 ほんと」「誇りとポリシーを感じる」といった反応があがっている。
「閉店のお知らせ」全文
発表は以下の通り。
「【コーヒーハウスニシヤ閉店のお知らせ】
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いつもコーヒーハウスニシヤをご利用いただきありがとうございます。今日は皆さまへ大切なお知らせがあります。
コーヒーハウスニシヤは来月の営業をもちまして、閉店することになりました。突然のお知らせになりますが、閉店はコロナ禍に入るずっと前から決めていたことで、閉店の準備に取りかかろうとした矢先コロナ禍に入りました。この期間も含め、激動の8年と2ヶ月でした。
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コーヒーハウスニシヤはイタリアのバールやフランスのカフェをモデルに、飲食店の姿をした地域コミュニティの場を提供することを目標とし、2013年9月にオープンしました。地域の方をはじめ、開業以前からお付き合いをいただいているお客さま、たくさんの新しいお客さまにご利用いただき、これまでお店を続けることができました。本当にありがとうございます。
閉店する理由はニシヤの歳の数だけありますが、いちばんの理由は「行列のできるお店」になったことが大きいです。行列ができるほどたくさんのお客さまにご利用いただけたことは大変ありがたく、経営者としこれ以上の喜びはありません。ですがサービスマンとしての私にとって行列ができることは喜びと苦しみが共存し、一人一人のお客さまへ十分なサービスを提供することができず、私の存在意義は何か?と自問自答を繰り返し営業を続けてきました。
行列は歩行者の妨げとなり、隣のクリーニング屋のお客さまにはいつもご迷惑をおかけしてしまいました。行列ができ始めた頃は『邪魔だ』と幾度も注意をされ、その度に頭を下げてきました。また日常的にご利用いただいている近隣のお客さまにも多大なご迷惑をおかけし、地域に根ざすはずだったお店は地域で使いづらいお店となってしまいました。『いつも入れない』この言葉が本当に辛かったです。その他にも営業日数や営業時間、メニューを縮小し、様々なことを諦めないと前に進めない状況になり、次第にお店のビジョンが見えなくなっていきました...
私にとって大切なのは、お店が流行ることよりもお店にスタイルがあり、スタイルを持って仕事をし、それに共鳴してくれるお客さまがいることです。それができなくなってしまった時、コーヒーハウスニシヤの閉店を決めました。
今思えば行列ができるようになってから、一日中お客さまへお詫びとお願いをしていたように思います。正直、それはもうしたくありません。残された営業では、一つでも多くの「ありがとう」をお伝えできたらいいなと思います。
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最後にもう一つ、大切なお知らせを。
コーヒーハウスニシヤは来月で終わってしまいますが、来年1月に新しい街で新しい屋号を掲げ、新しいスタイルでお店を始めます。第二章でも引き続きお付き合いをいただけるように、ちょっと美味しいコーヒーと、ちょっとだけ美味しいフードとスイーツをご用意して皆さまのご来店を心よりお待ちしています。明るく、そして美しく」