韓国の警察トップにあたる金昌龍(キム・チャンリョン)・警察庁長官が島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸し、松野博一官房長官は2021年10月17日午前の記者会見で、「到底受け入れることができず、極めて遺憾」と非難し、韓国側に抗議したことを明らかにした。米国で予定されていた日米韓の共同会見も、この影響で米国のみが参加する形で開かれた。
聯合ニュースによると、現役の警察トップによる竹島上陸は09年以来12年ぶり。竹島を警備する警察官を激励する狙いがあるとみられる。竹島を訪問する人はコロナ禍で落ち込んでいたが、21年は反動で倍増。日本による領有権主張に反発して竹島観光する人が増えている人がいるという指摘もあり、日本政府が主張する「不法占拠」が進んでいる。
松野官房長官「到底受け入れることができず、極めて遺憾」
竹島の警備は、軍の代わりに警察で勤務し、兵役の受け皿として知られてきた「義務警察」が担ってきた。この義務警察の制度が廃止されることになり、21年3月から一般の警察官が竹島を警備している。竹島上陸は、警察官の激励が目的だとみられる。
松野氏は、韓国側の目的には「私から申し上げる立場にはない」とする一方で、次のように韓国側を非難した。
「諸般の状況から上陸が行われたものと考えられるが、現時点で韓国政府から確認は得られていない。上陸が事実であれば竹島が歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土であることに鑑み到底受け入れることができず、極めて遺憾。韓国政府に対しては15日に事前の報道を受けて直ちに計画の中止を申し入れたのに続き、16日にも改めて厳重に抗議をしたところだ」
米ワシントンで11月17日(現地時間)に行われた日米韓3か国の外務次官協議後には3者の共同記者会見が予定されていたが、急きょシャーマン米国務副長官のみの会見に変更された。日本が警察庁長官の竹島上陸を理由に、会見を拒否したためだ。
韓国政府は05年に観光客の竹島訪問を解禁。韓国外務省のウェブサイトによると、これまでに250万人以上が訪れている。解禁直後の05年は4万1134人だったが、13年には25万5838人に増加。14年はセウォル号沈没事故、15年は中東呼吸器症候群(MERS)の影響で13万9892人、17万8785人と低調だった。16年は20万6630人に回復し、19年には25万8181人に達した。20年はコロナ禍の影響で8万9374人に落ち込んだ。
21年は、その反動で急増している。竹島の観光シーズンは3月中旬~11月中旬。6月に韓国日報が独島管理事務所などの話として伝えたところによると、21年3月に1243人だった竹島訪問客は4月は1万1401人に伸びた。10月は2万528人。21年に入ってから6月10日までの累計は4万1525人で、前年同期の2万1268人から95.2%増えている。
アンケートでは9割超が「機会があれば独島に行く」
韓国でも国境を越えた往来は引き続きハードルが高いが、21年に入ってから国内旅行の客足が戻り、韓国日報では「(経由地の)鬱陵島と独島の清浄なイメージが浮き彫りになり、訪問客が大きく増えた」と指摘。東京五輪ウェブサイトの日本地図に竹島が載っていたことに韓国側が反発したことも「独島訪問客増加要因とみられる」とした。
韓国メディアによると、通販サイトのティモン(TMON)が、韓国側が「独島の日」だと主張する10月25日に合わせて行った顧客アンケートで、調査対象701人のうち94%が「機会があれば独島に行く」と回答している。 竹島に行きたい理由として83%が「独島が持つ歴史的意味」を挙げ、「観光目的」の14%を大きく上回った。実際に竹島に行ったことがあると答えたのは9%にとどまった。竹島旅行に行ったことがない人に理由を尋ねたところ、66%が天候で船の運航が不確実なことを挙げた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)