枝野幸男氏が回答拒否した記者の質問 辞任会見でバトル勃発、現場で見た一部始終

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   立憲民主党の枝野幸男代表が2021年11月12日の辞任に際して行った記者会見で、記者会見での質問のあり方をめぐる応酬が展開される場面があった。主張を交えた3分超にわたる記者の質問に対して枝野氏は「お答えをすべきではない」と回答を拒み、記者会見のあり方を見直すことについて次期執行部に引き継ぐ考えを表明。質問した記者は、質問事項は視聴者から寄せられる意見をもとに総合的に決めており、「私の意見を申し上げているわけではない」と反発している。

   特定の記者を排除する可能性については「『排除する』とかいうことではなくて...」と、現時点では否定的だが、「現場の(他の)記者さんが困っているのを4年間聞いてきた」とも指摘。会見のあり方について「なんとか整理できれば」と話した。

  • 辞任にあたって記者会見する立憲民主党の枝野幸男代表。記者会見のあり方を見直すことについて次期執行部に引き継ぐ考えを表明した
    辞任にあたって記者会見する立憲民主党の枝野幸男代表。記者会見のあり方を見直すことについて次期執行部に引き継ぐ考えを表明した
  • 辞任にあたって記者会見する立憲民主党の枝野幸男代表。記者会見のあり方を見直すことについて次期執行部に引き継ぐ考えを表明した

3分10秒にわたって主張を交えて質問

   枝野氏が問題視したのは、ネットメディア「IWJ」による質問。大きく要約すると(1)衆院選で立憲は得票数・得票率ともに伸びており、議席が減ったと言っても、その数は自民党よりも少ないため、枝野氏は辞任する必要はない(2)衆院選の「本質的な争点」は、自民党が掲げる緊急事態条項の新設を骨子とする改憲4項目の是非だった(3)22年夏の参院選は「この国の命運を懸けた一大決戦」で、「改憲反対派」の立憲の責任は重大(4)誰が立憲の新代表に就くかは重要だが、出馬の意欲を示している人の中には、改憲に前向きな日本維新の会に「寄り添うような発言をしている」人もいる(5)枝野氏としては、改めて代表選に立候補したり、後継候補を指名したり、後継者に「緊急事態条項は絶対に許さない」ことを求めたりする考えはあるか、といった内容の質問だ。

   枝野氏に(5)を質問しているが、その前提として(1)~(4)で質問者の主張や見解、解釈を披露する構成だ。具体的には、3分10秒ほどかけて次のように述べた。

   今回の衆議院選挙の結果の責任を取る形で代表辞任とのことでありますけれども、立憲民主党の得票数を見ますと、2017年選挙では1108万4890票から、今回の2021年選挙では1149万1997票と、40万票増えております。また、2014年、民主党時代は得票で977万票でしたから、200万票近く得票を伸ばしたことになります。得票率でも2014年は18.33%、2017年と比較しますと若干ではありますが19.88%から、20.00%と増えております。減らした議席も14(議席)で、15議席の自民党より少ない。なのに、岸田総理は国民から信任を得たと胸を張っているのに、立憲の枝野さんはマスメディアから総攻撃されて責任を過剰に痛感している気がします。事前の予想で立憲(の)議席増を勝手に予想しておいて、それが外れたからとバッシングするマスコミの身勝手さに過剰にお付き合いして、辞任する必要があるのでしょうか。また今回の選挙では意図的に隠されていましたが、本質的な争点は緊急事態条項を核とする自民党4項目の改憲か、その改憲案に反対かであったことは明らかです。
   そこから考えますと、来夏の参議院選挙は、この国の命運を懸けた一大決戦となることは明らかです。立憲民主党は野党第1党として、そして緊急事態条項を核とする自民党改憲案4項目に反対する改憲反対派として、この国の市民、国民に対して重大な責任を負っているのではないでしょうか。改憲が行われ自民党案の制限も解除規定もない、内閣の独裁を半永久化する緊急事態条項により民主制自体が規制されることは明白です。このような状況下では野党第1党の代表に誰が就くかは、一党内の人事の問題では済まない国民的な重大事ではないでしょうか。すでに後継の代表選に名乗りを上げた人物の中には、自民党よりも改憲に貪欲な姿勢を見せる維新と寄り添うような発言をしている小川淳也議員のような方もいらっしゃいます。この代表人事を誤れば、この国の未来を危うくする。そのような視点で考えなければ立憲民主党は分裂しかねず、結果として改憲派を利することになりかねないと思います。
   代表選にご自身も出馬されるか、自民党総裁選で安倍元総理が高市早苗氏を支持したように、ご自身が後継の候補としてふさわしいと思う人物を指名、支持するか、またそうした際に、緊急事態条項は絶対に許さないと、今度こそ、この問題を焦点に据えて野党共闘で闘うことを後継者の条件として提示するとか、枝野さんのお考えをお伺いしたいと思います。

IWJ記者「私は私の意見を申し上げているわけではありません」

   この質問に対して、枝野氏は次のように述べ、回答を拒否した上で記者会見のあり方に関する問題意識を次の執行部に引き継ぐ考えを示した。

「申し訳ありませんが、後段はあなた様のご意見だと思います。記者会見というのは、あなた様のご意見を聞かせていただいて、それに対して、むしろそれをそうすべきだということに対するお答えをする場ではない(と考えている)。ここの記者会見のあり方は、4年やらせていただいて、ちょっと次の執行部には引き継ぎたいと思います。考え直さないといけないと。あくまでも、中立的立場の報道機関の皆さんに対して、説明をする場だと私は思っております。それを通じた、あなた様も含めて、国民・有権者のみなさんが色んなことを判断されるとか...」

   続けて枝野氏は次のようにも述べた。実態はともかく、少なくとも中立だという体裁で質問をする必要があり、IWJの「質問」は「ご意見」だという見解だ。

「そういったことはあってもいいと思いますが、中立...、まぁ、すいません、『実態としては中立ではないだろう』とか、こちらの思いはありますが、一応中立的な立場を前提にしている報道機関の皆さんに対する会見と、それでない『ご意見』に対してコメントをしろという話とを一緒にするのは、ちょっと避けなければならないと思っておりますので、申し訳ありませんが、本質的な問題として、次の執行部にそこの見直しを引き継ぎたいと思っておりますのでお答えを申し上げません」

   この枝野氏の発言に対してIWJ記者は次のように反論し、独自の主張を展開しているとの見方を否定した。

「誤解があるようなんですけれども、私は私の意見を申し上げているわけではありません。私どものメディアは常に市民から色々な要請やご意見を頂戴しています。その事実に基づいて私どもは総合的に、私どもの中で判断しまして、これはやはり野党第1党の方にお伺いするのが筋ではないか、という風に考えた上でこのようにしているわけです」

「そもそも選挙の争点は、あなた様が決めることでもなく...」

   枝野氏はさらに反論。「中立」という体裁の必要性を改めて指摘し、IWJが主張する衆院選の争点は妥当ではないと主張した。

「そういう意見の方がいらっしゃるのは分かるし、あなた様の報道機関としての社論として、それは新聞社でも社説では私たちの考え方と180度違う社説を載せていらっしゃる方もいらっしゃいますが、そういう社の方も、こういった場では中立性という立場に立った前提での質問を皆さんしていただいています。記者会見というのは、私はそういう場だと思っておりますので、そこを整理しないと記者会見が混乱をすると思っておりますので、そういったことの本質は次の執行部で検討してもらいたいと思っておりますし、私は今の前提そのものが、そもそも選挙の争点は、あなた様が決めることでもなく、トータルとしての総有権者が決めることであって、今回の争点でなかった、というのは間違いない。次の選挙の争点が何になるかも、その時点での総有権者が判断することだと思っています」

   IWJ記者はこれを受ける形で

「承知しました。『中立』ということについては、改めてご見解をお伺いしたいと思います。次の機会に...」

などと話しているところに枝野氏が割って入って「次の機会は、私はありませんので、すみません。それは次の執行部が考えると思います」。

   司会の党職員が

「報道担当として、今の議論を受け止めて考えたいと思います」

などと引き取った。

   他の記者からも記者会見のあり方をめぐる質問が出た。朝日新聞記者は、「中立性」という言葉は「かなり恣意的な、解釈の幅がありうるもの」だとして、「引き継ぎ」でネットメディアやフリーランスの記者が排除される可能性について質問。枝野氏は「排除」については否定しながらも、他の記者からは苦情も寄せられていたことを指摘。記者会見のあり方を「整理」することが必要だとした。

「別に『排除する』とかいうことではなくてですね、記者会見というのはどういう場なのか、と。もちろん、いろんな意見の方、『こういう意見の人もあるけどどうですか』みたいなのは当然ありうるとは思うんですが、それを延々とお話しをいただく場では全くないのは間違いないと思っていますので、それは他の記者さんが迷惑しているという声をたくさん聞いてもおりますし...。私もミニ集会か何かで意見をお聞きするのは、当然聞いていかなきゃならないです。それは『記者会見の場ではないな』と思うので、そういう整理はきちっとしないとですね...、現場の記者さんが困っているのを、この4年間聞いてきましたので。そこは何とか整理できればなぁ、ということを引き継ぎたいと思います」

「排除発言から生まれた立憲民主党の代表とは思えない暴言だと思うんですが」

   フリーランスの横田一記者は、枝野氏の発言を非難し、撤回を要求。

「(小池百合子都知事の)排除発言から生まれた立憲民主党の代表とは思えない暴言だと思うんですが、撤回なさるお考えはないんでしょうか」

   枝野氏は「どういう判断をされるかは次の執行部」だとして、IWJの質問を改めて批判した。

「先ほどのご発言は完全にですね、ご自身やご自身に託されたご意見の開陳の部分が圧倒的に長くて、同じことをお聞きになって、私の見解を聞きたいのであれば、全く1分で済む話だったと私は思います」

   横田氏が

「だったら事前に注意して『今後は控えるように』で、それで済む話で...」

と改めて方針を批判すると、枝野氏は次のように話し、初めて明示的に質問を批判した経緯を明かした。

「毎回それに対するいら立ちはお示しをしてきましたが、代表を離れるので、はっきりと申し上げただけです」

   ここても司会の党職員が

「報道担当として重く受け止めたいと思います。私の仕切りを含めて、総括をしてまいりたいと思います」

と付け加え、次の話題に移った。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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