左手1本で包丁を扱い、フライパンを火にかける。卵焼きも難なく巻ける。20歳の時に事故で右手と両足を失った山田千紘さん(30)は、1人暮らしで自炊する毎日。昼食用の弁当作りは継続すること8年。インスタグラムでも頻繁に弁当写真を公開している。
「事故の前は全く料理をしたことがなかった」という山田さん。なぜ手足をなくしてから始めたのか。料理を続ける意味とは。山田さんが語った。
【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)
仕事の日は基本的に弁当を作る
インスタグラムのフォロワーさんからつい先日、弁当箱を頂きました。5代目の弁当箱として今週から使っています。
弁当は、事故後に就職してから8年間、作り続けています。米を炊き忘れたり、仕事の都合で弁当が不要だったりする日はありますが、仕事の日は基本的に毎日作ります。
一番多いメニューは卵焼きです。弁当には卵をよく使います。あと野菜もいろんな種類を使います。煮物も炒め物もするし、栄養バランスも良くなるよう心掛けています。料理の風景はYouTubeでも何本か公開しています。
「左手だけで料理できるのか」と思う人もいるかもしれません。たとえば野菜の皮むきは、まな板にラップを敷き、野菜を置いて、無いほうの右手でどうにか押さえて、左手でピーラーを引きます。押さえている部分はむけないので、向きを変えて半分ずつ作業します。
にんじんや大根など長さのある野菜はこれでむけますが、じゃがいもは丸いので大変です。電子レンジで温めて柔らかくするなど工夫しています。
他にも、卵は片手で割れるし、ゆで卵も片手でむけます。右利きだったけど、左手で包丁も扱えます。
日頃の料理に必要な作業は大体できるようになってきたと思いますが、細かい作業は難しいです。ハロウィンでカボチャを使ったお菓子作りをしましたが、裏ごしなど、一方の手で押さえながらの作業は大変ですね。ネギのみじん切りも下手です。ネギ大好きなんですけどね。リンゴもクルクル回して皮をむくことができません。だから、結婚するならネギのみじん切りとリンゴの皮むきができる方だとありがたいかもしれないです。