日本航空(JAL)は2021年11月2日に開いた決算会見で、国内線の運賃体系を大幅に改め、22年春をめどに概要を発表する見通しを示した。「非常に複雑な運賃が山のようにある」現状を、国際線並みにシンプルにする。
国内線運賃をめぐっては、日経新聞が10月26日付の朝刊で種類を減らして簡素化することを報じており、大筋で認めた形だ。ただ、この記事の見出しは「JAL、早期割引を廃止」。会見に出席した菊山英樹専務は、「早期割引を廃止する」「割引がなくなる」といった表現を「短兵急な捉え方」だとして「全く我々の趣旨とは違う」と強く否定した。
「路線別どころか便別に、非常に複雑な運賃が山のようにある」
日経は、
「普通運賃のほかに『先得』など8種類ある早期割引を廃止し、予約の変更ができるかなどの条件の違いを基にした3種類ほどの運賃に絞る。低採算の値引き販売を減らすため一部の顧客には値上げとなる」
などと報じていた。この記事を念頭に置いた
「一部の報道で、国内線の運賃体系を抜本的に見直すという話が出ている」
という記者の質問に応じる形で、菊山氏が大筋の方向性を明らかにした。
菊山氏は
「国内の色々なルール、航空に限らず『ガラパゴス化』みたいな言われ方をする」
とした上で、今の国内線運賃は「ガラパゴス化」によって複雑化したため、簡素化に向けた検討を進めていることを説明した。
「今の国内運賃、色々な歴史があるが、路線別どころか便別に、非常に複雑な運賃が山のようにあるというのは、おそらくお客様から見ても非常に分かりにくい部分が多々あると思う。こういったところを国際線(運賃体系)の考え方に沿った形でシンプルにしていく。これは狙っていきたい、ひとつのポイントだ」
「イールドマネジメント=値上げ」なのか
さらに、「早期割引を廃止する」「割引がなくなる」といった表現については次のように述べ、強く否定した。
「こういう...何て言うんだろうんだろうな...、短兵急な捉え方は全く我々の趣旨とは違うので、そこは是非誤解のないようにしていただきたいと思うし、一定の期日までの割引、こういった制度は残る。残した上で、お客さまに分かりやすく、なおかつ我々のイールドマネジメント(収益最大化)の最大限の効果を発揮できるような、そういう形での仕組みをこれから取り組んで作って参りたい」
JALは現時点で、早期割引にあたる運賃を「先得」「特便割引」といった名称で売り出している。予約や購入するタイミングによって、75日前、55日前、45日前、28日前、21日前、7日前、3日前、搭乗前日、といった具合に細かく運賃が変わる。これらの区分を整理するとみられる。
菊山氏が言及した「イールドマネジメント」では、空いている便を値下げし、混雑時の便を値上げすることなどで収益性を高めるとみられるが、運賃全体として値上がりするかは明らかではない。こういった方向性について、JAL広報部では
「国内線の運賃の刷新について、検討しているのは事実ですが、現段階で具体的な内容をお伝えできる段階にはありません。お客さまにとって、より分かりやすくシンプルに、また利便性の高い運賃体系やサービスになるようにしたいと考えております」
とコメントしている。
JALはこの日の決算会見で、
JALはこれまで22年3月期の通期業績見通しを未定だとしていたが、この日の会見で、連結ベースで1460億円の最終赤字を計上する見通しを発表した。コスト削減策が奏功し、前期の2866億円から赤字幅は縮小するが、2期連続の最終赤字だ。
一方、22年3月期の連結決算で35億円の最終黒字を見込んでいたANAホールディングスは10月29日に一転、1000億円の最終赤字になる見通しを発表した。赤字幅は前期の4046億円から縮小するが、需要回復のペースが予想よりも遅れており、見通しを修正。JAL同様、2期連続の最終赤字だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)