作りこまれた映画やゲームなどの3D映像を見ているときに、めまいや吐き気を感じるなど、乗り物に酔った時のような気分の悪さを感じたことはないだろうか。こうした症状は3D酔い、ゲーム酔いなどと言われる。
こうした悩みに応える特集ページを、大正製薬が制作した。症状の原因やメカニズム、対処法などを紹介するもので、SNS上では「すごく勉強になった」などと大きな反響が寄せられている。
なぜ「3D酔い」や「ゲーム酔い」に注目したのだろうか。J-CASTニュースは、大正製薬にこのページを制作した背景を取材した。
今までの空間知覚パターンとのミスマッチで起きる
大正製薬は乗り物酔い薬「センパア」の紹介ページ上で、乗り物酔いに関する豆知識を公開している。SNSで注目を集めたのは、この特集の中にある「VRやゲーム、3D映画などで起きる『3D酔い』とは?」と「『ゲーム酔い』はどうしたら防げる?」という2つの記事だ。
記事によれば、「3D酔い」は乗り物酔いとよく似た症状で、今までの空間知覚のパターンとのミスマッチで起きると指摘。とくに3D酔いが起きやすいゲームについてはプレイ環境を整えるなどして対策することができるという。
こうした3Dゲームのプレイ中におこる「ゲーム酔い」に対して用いる薬は「吐き気止め」ではなく「酔い止め」が良いという。ゲーム酔いは、脳の混乱で起きるもので、乗り物酔い(動揺病)と一部同様のメカニズムで生じると考えられているという。
そのため、3D酔いやゲーム酔いには、酔い止めに含まれていることが多い抗ヒスタミン薬と抗コリン薬の2種類が効果的とのこと。一方で、「吐き止め」と呼ばれる消化管に作用する薬についてはあまり効果を発揮しないとしている。
記事の内容は医学博士の監修を受けたもので、SNSでは「3D酔いの回避方法も載せてる。大正製薬グッジョブ」「大正製薬にこんな記事あってびっくりした、すごいや」と好評。大正製薬は、こうした反響に手ごたえを感じていると述べる。
「ニーズへの対応を考え取り組んできたものが注目されたことに関しては非常に嬉しく思っています。今後も伸び行く市場だと考えておりますので弊社としても引き続き調査していきたいと思います」
FPSブームで「ゲーム酔い」の悩み増える?
大正製薬によれば、「3D酔い」や「ゲーム酔い」に関する特集ページは2021年3月から掲載している。注目した背景についてはこう述べる。
「『VR酔い』『3D酔い』などのワードが検索サイトやSNS上で増加していることに注目しました。VR酔い(映像酔い)については、酔いの起こる機序が普通の乗り物酔いと同じということもあり、VR慣れしていない人はVRで酔う可能性が非常に高いと考えました。また、FPSの盛り上がりにより2021年度のVRヘッドマウントディスプレイ市場が2016年に比べ1900%前後まで伸長するだろうという点も注目しています」
FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)とは、自身が操作するキャラクターの視線でシューティングを行うゲームを指す。昨今は「エーペックスレジェンズ」、「レインボーシックス」などの人気タイトルが幅広い世代に親しまれている。そんな中、よりゲーム空間への没入感を楽しむために、頭部に装着するディスプレイ「ヘッドマウントディスプレイ」の需要も高まるものとみられている。
しかし一人称視点で立体感のあるリアルな画面に向かい続けていると、気分が悪くなってしまうという人も少なくない。FPSブームによって生じるプレイヤーの悩みに応えるため、今回の特集ページを作ったというわけだ。
今回の特集ページについて、大正製薬は次のようにもコメントしている。
「バーチャルリアリティーの世界が身近になる中で、3D酔いに悩む人も増加しています。3D酔い対策や健康のためにもあまり長時間プレイし続けずに、時間を決めて適度に楽しむことが大切です」
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)