衆院選(2021年10月31日投開票)宮城2区で当選した立憲民主党・鎌田さゆり氏が飼っている「ヤギ」をめぐり、ツイッター上では波紋が広がっている。
鎌田氏は選挙期間中に子ヤギの「仙台メリー」の写真や動画をSNSに投稿。10月20日には、枝野幸男代表との3ショットも掲載していた。しかし、選挙直後の11月3日に「最後まで責任を持って寄り添い育てることは困難」だとして、里親への譲渡を発表。この対応には、ペットの政治利用、動物愛護の観点から指摘が相次いだ。
鎌田氏はその後、一転して里親に出さず飼育を続けることを表明。いったい、なにがあったのか。J-CASTニュースは鎌田氏に話を聞いた。
「使い捨てならお世話しません」
鎌田氏は宮城県仙台市出身。地元の大学を卒業後、00年に当時の民主党から宮城2区で出馬し、初当選を果たした。03年衆院選で2選となるも、鎌田氏を支持していた労組幹部の選挙違反事件を受け、04年に議員辞職。05年に離党している。12年に復党すると、今回の衆院選では自民現職の秋葉賢也氏を571票差で破り、16年10か月ぶりの国政復帰を果たした。
今回の選挙戦、鎌田氏のツイッターで頻繁に登場したのが、同氏が飼っている子ヤギ・仙台メリーだ。公示日前の10月5日に、辻立ち後の鎌田氏が仙台メリーをハグしている写真を投稿。これを皮切りに、仙台メリーが落ち葉を食べる様子や、鎌田氏の上に乗っかる様子なども投稿された。公示後の20日には、自身と仙台に遊説中だった枝野代表とのスリーショットを披露し、25日には鎌田氏が仙台メリーと一緒に選挙カーを迎える様子を伝えた。
衆院選勝利から3日後の11月3日、鎌田氏はこんなツイートを投稿する。
「投開票の夜、仙台メリーさんは鎌田のそばでずっと鎌田を見守ってくれていました。最後まで責任を持って寄り添い育てることは困難で栗駒(編集部注:宮城県栗原市の地名)の里親さんに育てて頂くことに。今週(土)メリーさんは里親さんの元に」
突然の「飼育終了」宣言。ネット上では選挙・政治利用のため短期間だけヤギを飼っていたのではないかとして、動物愛護の観点から批判の声が相次いだ。鎌田氏が動物愛護活動に力を注いでいたこともあり、行動の矛盾を指摘する声もあった、
こうした声に、鎌田氏はツイッター上で反論。「ヤギは事務所横の草刈り」のために飼っていたもので、政治利用ではなかったこと、当初から里親予定者と相談の上で飼育をしていたと伝えた。また、ユーザーから「使い捨て」ではないかという指摘が寄せられると「使い捨てという表現は彼女にも失礼です。使い捨てならお世話しません」と返信していた。
「今後はずーっと鎌田と一緒に暮らしていくこととなりました」
ツイッターで「動物愛護」というワードがトレンド入りするなど、一連のツイートが波紋を広げていた4日昼、鎌田氏はこんなツイートを投稿する。
「仙台メリーさんのこれからにつきまして、多くの方からご意見頂きました。また、『家でも一緒に暮らせますょ』とアドバイスも頂きました。本当に有難うございます。今後はずーっと鎌田と一緒に暮らしていくこととなりました」(原文ママ)
里親への譲渡予定から一転、仙台メリーを飼い続けるとしたのだ。鎌田氏はその後、「ご指摘の通り、見通しが甘かった点否めず反省をし、彼女とはこれからも一緒に暮らして参ります」と改めて飼育継続の意思を示した。
いったい何があったのか。J-CASTニュースは4日、鎌田氏に電話で話を聞いた。
鎌田氏によると、仙台メリーを飼い始めたのは8月末。衆院選立候補にあたって仙台市内で選挙事務所を借りる際、事務所の近くで草が生い茂っていた。このことを、宮城県栗原市の畜産農家に相談すると「ヤギに草を食べてもらえばいい」と助言され、農家が飼っていたヤギのうち1頭を譲り受けた。
選挙後の里親への譲渡は、ヤギを飼う前から考えていたことだったという。
「もしも選挙で当選し、東京との往復になると、ずっと責任をもって飼えないとお話ししました。畜産農家には、同じ栗原市内に住んでいる男性が『自分の敷地内の草を食べてくれるヤギが欲しい』と、相談に来ていました。その際に『もし鎌田さんが東京との往復になれば、自分が里親になる。鎌田さんが仙台に戻ってきたときは、一緒に会える環境にして、一緒に育てていきましょう』とお申し出いただきました」
「事務所に来る人たちが『当選したあとはメリーさんどうするの?』と心配して聞いてくださりました。『メリーさんは生きて、ミルクを出せるようになるまで、バトンリレーを準備していますので、大丈夫です』ということを、当初からマスコミのみなさんにはお話ししていました」
「『もう、手放すのはちょっと厳しいなあ』ってずっと思っていて」
枝野代表との写真撮影については「選挙はどうしても殺伐とした感じになるので、うちはメリーさん中心に殺伐としないでやっていますよ、ということをお伝えするためでした」と説明。政治利用のために飼育していた意図は「全くない」とした。
鎌田氏が国政復帰を果たし、11月6日には里親の元へと渡る予定だった仙台メリー。なぜ、譲渡を撤回したのか。
「毎日事務所のみんながファミリー的に育てていて、私が車のドアを開けるとすぐ乗っかってきてくれる。(仙台メリーが)わが子的なものになっていきました。『もう、手放すのはちょっと厳しいなあ』ってずっと思っていて」
「栗原から連れてきたときは、完全に野生でした。足や肛門が糞尿にまみれていた。毛もごわついていた。今はみんなで身体をブラッシングしたり、濡れおしぼりで足を拭いたりしているから、家の中で飼える状態になっています」
「里親に育てて頂く」とツイートしたあと、鎌田氏と同様、家で猫とヤギを飼っている人から電話をもらったことも「迷っていた決断を後押してくれた」と話す。
「きょう(4日)みんなで話し合って、里親になってくれる予定の人には『ごめんなさい。やっぱり手放せないです』と連絡しました。そうしたら『そうだろうと思ってましたよ』と...」
今後は鎌田氏の自宅と仙台の事務所で仙台メリーを飼育していくという。「東京との往復になると、ずっと責任をもって飼えない」と語っていたが、どうやって育てていくのだろうか。
「仙台の事務所の人間がいますので。兄弟姉妹状態なので、全く心配はいらないです。排泄物をちゃんと取って、彼女が生きる環境を整えていきます」