2021年の「ユーキャン新語・流行語大賞」には、どんな言葉が選ばれるだろうか。
例年11月上旬に行われるノミネート30語の発表に先駆け、J-CASTニュース編集部は「現代用語の基礎知識」元編集長の清水均氏に、「トップテン」及び「年間大賞」の予想を依頼した。
年間大賞は「該当なし」?
例年、流行語大賞はノミネート語30語から「トップテン」(10語)が選出され、さらに、そのトップテンから年間大賞(1語、もしくは複数)が選出される。
2018年の第35回まで20年近く同賞の選考委員を務めた清水氏は、まず、今年の新語・流行語について非常に勢いが弱かったと指摘した上で、「年間大賞については該当語なし」との見解を示した。
「総論としては、大賞語の見当たらない荒(すさ)んだ年だったと思います。こんな中で無理くり選ばなきゃならない選考委員は気の毒です」
その上で、「トップテン」として以下の10語を予想した(順番は清水氏が挙げた通り)。
うっせぇわ
時短営業
変異株
オリパラ
ゴン攻め
多様性
ジェンダー平等
まん防
ヤングケアラー
ワクチンパスポート
やはりコロナ関連のワードが強い?
講評にあたって、まず、清水氏は、流行語大賞とはそもそも何かについて、
「この賞の受賞語(トップテン)というのは、新登場した言葉であり&なおかつ共感を呼んで流行、流通した言葉、であるはずなのです」
と、賞の性質を説明。そのうえで、
「こういう本来の審査基準に照らして考えると、どうしてもコロナ関連のワードが並びます。『まん防』『時短営業』『ワクチンパスポート』『変異株』ですね。『デジタル庁』みたいに新しいだけではダメなんです。また、『新しい資本主義』なんて言っても中身がないのは見透かされてますから掛け声だけで終わりです」
と解説した。続けて、清水氏は文化・芸能の分野について、
「今年何が流行ったかなと考えると、『マリトッツォ』『うっせぇわ』『逃げ恥婚』『呪術廻戦』『イカゲーム』『マンホール聖戦』といったモノやコトが挙がります。ただ、流行語大賞は流行商品ランキングとは違うので、ここでは言葉の面から見て行きたいわけですが、そうなるといかにも今年の新語・流行語とするにふさわしいのが『うっせぇわ』だと思います」
と指摘した。
スポーツは「ゴン攻め」、社会問題では「ヤングケアラー」
その後も清水氏の予想は続く。スポーツの分野では、やはり東京オリンピック・パラリンピックがそれなりの強さを発揮したとした上で、以下のように指摘した。
「さて、2021年は曲がりなりにもオリンピックが開催された年なので、オリパラから受賞語が出てほしいという気持ちはあります。流行現象を生み出すような行事とか大きな関心事がなかなかなくなって久しいですから、新語・流行語大賞にとってオリンピックは大事な宝箱になるはずだったのです。大谷翔平がどんなにメジャーリーグで大記録を作ったとしてもそれはあの世界の出来事にすぎず、五つの輪にはかないません」
「ところが、今回の五輪は、直前まで開催反対の声が高まりました。共感どころか、非常に違和感の漂う中での開催、強行となりましたよね。今までのオリンピックのような熱い感動の場面を求めるには無理があった。あえて面白さを探すならスケートボードの中継から出た言葉たちで、その代表として『ゴン攻め』を推しておきます。ただ、捨てがたいのは『オリパラ』というワード。パラリンピックの存在を強調するための新語としてよく普及した例で、たぶん選考委員会では拾いきれない用語でしょうけど、私は評価しておきたいです」
最後に、清水氏は社会問題の分野では、他の分野に比べると層が厚いのではないかと指摘した。
「『よく使われているのに受賞し損なってきた用語』とでもいう言葉があるんです。『SDGs』とか『多様性』『ジェンダー平等』などがいい例でしょう。社会を考えるときにいずれも大事な用語ですが、選考委員会ではどうしても1年限りに絞った状況から選びがちで、どうしても漏れてしまうんです。なので、これらを考慮に入れた場合、社会問題からは、『多様性』『ジェンダー平等』『ヤングケアラー』がトップテン入りするのではないでしょうか。ただ、『親ガチャ』『生理の貧困』『わきまえない(女)』も、候補として非常に捨てがたく感じました」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)