就航10年「ボーイング787」の今後 コロナ禍で「経済性に優れた航空機」の強み生かせるか

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中型旅客機のボーイング787型機が2021年11月1日、定期便として運航を始めてから丸10年を迎える。その前日にあたる10月31日、「ローンチ・カスタマー」として787を世界で初めて運航した全日空(ANA)が、10年前の初号機と同じ飛行機を使った記念フライトを運航し、10周年を祝った。

   787は従来の中型機よりも燃費が良く、航続距離が長いのが特徴。大型機で多くの乗客を運ばなければ維持が難しかった長距離路線に投入しても採算が取りやすくなり、「ゲームチェンジャー」とも呼ばれた。半面、バッテリーやエンジンのトラブルで多数の欠航を余儀なくされた時期もあり、紆余曲折の10年でもあった。

  • ボーイング787型機の就航10周年を記念するフライトは、空港係員の横断幕に見送られて岡山空港に向けて出発した
    ボーイング787型機の就航10周年を記念するフライトは、空港係員の横断幕に見送られて岡山空港に向けて出発した
  • 空港係員に見送られて出発するボーイング787型機
    空港係員に見送られて出発するボーイング787型機
  • 記念フライトには10年前の初便と同じ飛行機「JA801A」が使われた
    記念フライトには10年前の初便と同じ飛行機「JA801A」が使われた
  • 搭乗ゲートにも「10周年記念フライト」の表示
    搭乗ゲートにも「10周年記念フライト」の表示
  • ボーイング787型機の国内線としての定期便初便は2011年11月1日の羽田発岡山行き、NH651便だった
    ボーイング787型機の国内線としての定期便初便は2011年11月1日の羽田発岡山行き、NH651便だった
  • ボーイング787型機が日本に初飛来したのは2011年7月3日。ボーイング社のテスト機2号機「ZA002」にANAのトリトンブルーの塗装が施され、羽田空港に着陸した
    ボーイング787型機が日本に初飛来したのは2011年7月3日。ボーイング社のテスト機2号機「ZA002」にANAのトリトンブルーの塗装が施され、羽田空港に着陸した
  • ボーイング社のテスト機1号機「ZA001」は中部国際空港(愛知県常滑市)内の商業施設「FLIGHT OF DREAMS」(フライト・オブ・ドリームズ)に展示されている
    ボーイング社のテスト機1号機「ZA001」は中部国際空港(愛知県常滑市)内の商業施設「FLIGHT OF DREAMS」(フライト・オブ・ドリームズ)に展示されている
  • ボーイング787型機の就航10周年を記念するフライトは、空港係員の横断幕に見送られて岡山空港に向けて出発した
  • 空港係員に見送られて出発するボーイング787型機
  • 記念フライトには10年前の初便と同じ飛行機「JA801A」が使われた
  • 搭乗ゲートにも「10周年記念フライト」の表示
  • ボーイング787型機の国内線としての定期便初便は2011年11月1日の羽田発岡山行き、NH651便だった
  • ボーイング787型機が日本に初飛来したのは2011年7月3日。ボーイング社のテスト機2号機「ZA002」にANAのトリトンブルーの塗装が施され、羽田空港に着陸した
  • ボーイング社のテスト機1号機「ZA001」は中部国際空港(愛知県常滑市)内の商業施設「FLIGHT OF DREAMS」(フライト・オブ・ドリームズ)に展示されている

「ゲームチェンジャー」の利点生かした新路線が続々と...

   787は、主に中型機のボーイング767型機の後継と位置づけられる機体だ。多くの航空機はアルミを中心とした素材で製造されてきたが、787は約50%を炭素繊維複合材で構成。従来よりも「軽く、強い」機体になり、燃費が向上した。部品の約35%を三菱重工、川崎重工、SUBARU(旧・富士重工)の3社が中部地区に持つ工場で製造され、一部では「準国産機」とも呼ばれた。その縁で、最初のテスト機「ZA001」は中部国際空港(愛知県常滑市)内の商業施設「FLIGHT OF DREAMS」(フライト・オブ・ドリームズ)に展示されている。現時点では全世界で1000機以上の787が活躍。ANAは21年4月時点で293機の飛行機を保有しており、そのうち787は74機を占める。

   日本に最初に787が飛来したのは11年7月3日。ボーイング社のテスト機の2号機にあたる「ZA002」にANAのトリトンブルーの塗装が施され、羽田空港に着陸した。9月28日には、ANAに引き渡された1号「JA801A」機が羽田空港に着陸。10月26日に成田発香港行きのチャーター便として運航され、これが787としての世界初の営業飛行になった。

   ANAだけでも12年から14年にかけて、羽田-フランクフルト、成田-シアトル、成田-サンノゼ、成田-デュッセルドルフなど次々に路線を開設。いずれも787が投入され、「ゲームチェンジャー」としての利点を最大限生かした。国内線としての定期便初便は11年11月1日の羽田発岡山行きのNH651便で、JA801Aが使われた。この日は、羽田-広島便でも787の運航が始まった。

バッテリー発火、エンジントラブルにも悩まされる

   大きなトラブルにも悩まされた。ひとつがバッテリーの問題だ。13年1月には日本航空(JAL)とANAの787でバッテリーから発火したり煙が出たりするトラブルが相次ぎ、米連邦航空局(FAA)が、検査と改善策の実施を命じる耐空性改善命令(AD)を発出。全世界の航空当局が追随し、全世界で787の運航が停止された。ボーイング社はバッテリーシステムを改修し、ANAとJALが787で定期便の運航を再開したのは6月初旬のことだった。

   もうひとつがエンジンの問題。787には、米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の「GEnx」か英ロールス・ロイス(RR)製の「トレント1000」のエンジンを載せることができ、JALはGE社製、ANAはRR社製を採用していた。18年にはトレント1000の回転翼(ブレード)に亀裂が発生し、飛行中に飛散する可能性があるとして、点検が必要だとする通知を国交省とRR社が出した。多くのエンジンで部品交換が必要になったため、ANAでは機材の調整がつかずに多くの欠航が出た(21年時点ではANAもGE社製エンジンの採用を始めている)。

 

   10周年記念フライトは、羽田発岡山行きのNH653便と広島行きのNH679便の2便。NH653便の機長は、10年前の香港行きチャーター便を機長として担当した安全推進センター副センター長の塚本真巳(つかもと・まさみ)さんが務めた。塚本さんは出発前に報道陣の取材に応じ、787が「10年間素晴らしい業績を残せた」とする一方で、コロナ禍だからこそ787の価値が生かされると説いた。

「10年前は、このコロナの状況は全然想像できなかったが、今、この状態になって、経済性に優れた航空機として非常にフォーカスされ、今後のANA、航空界を支える新機種、787だと信じている」

   NH653便にもJA801Aが使用された。空港係員の横断幕に見送られ、乗客・乗員210人を乗せて10時29分に出発した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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