「来て良かった」と口々に言ってくれたのが嬉しかった
ルートですが、僕は1時間半くらい歩くのもしんどいので、現実的に考えて神保町から東京ドーム、アメヤ横丁、上野公園と歩いて終わる予定でした。5キロメートルくらいですかね。
でも、いざ上野公園に着いたら「せっかくこんなに集まってくれて、ここで解散するのはもったいないな」と思って、あと4キロくらい先のスカイツリーを目指すことにしました。本を売るために始めた企画だけど、東京の名所を巡る散歩みたいになって、みんなで楽しんでいました。
30分の休憩を挟み、5時間かけて15時半まで、2万2000歩を歩きました。こんなに長時間歩くのは初めてで、ゴールした時は感動して泣きそうでした。足がガクガク震えていました。
結局、本100冊は売り切れなかったけど、違う達成感がありました。みんなで1つの方向に進んでいくことの一体感。みんな笑顔で終わったんです。「来て良かった」と口々に言ってくれたのが嬉しかった。僕も感謝でいっぱいです。
参加した人同士で、歩きながら仲良くなっていたのが印象的でした。僕は時間が取れなかったけど、食事にも行ったそうです。大人になると、フラットな関係で友達になる感覚って忘れがち。直接触れ合ったからこそ、絆が生まれたのかなと思います。
もともと本を売るために企画したイベントですが、目的は他にもありました。義足をアピールする機会でもあったんです。両足がない人間がこうして外を歩き回ることができると、多くの人に注目され、知ってもらうきっかけになれば、とも考えていたんです。思った以上に、道中で僕の姿に興味を持ち、足を止めて話を聞いてくれる人がいました。学生やおばあちゃんが通りすがりに本を買ってくれて、応援してくれたのも力になりました。