首都圏で発行されている夕刊紙3紙のうち、東京スポーツ、日刊ゲンダイの2紙が2021年秋に値上げに踏み切った。両紙にとって値上げは19年春以来2年半ぶり。当時は夕刊フジも値上げしており、3紙が足並みをそろえるかが焦点だ。
その前の値上げは東スポと夕刊フジが14年4月で、日刊ゲンダイが11年9月。それぞれ5年ぶり、7年半ぶりだった。部数減やコストアップを背景に、以前と比べてもハイペースの値上げを余儀なくされている。
日刊ゲンダイの値上げ理由は「紙面の充実のため」
東スポは9月16日(17日付)の紙面に掲載した社告で、
「弊社としましてはこれまで新聞発行に伴う業務の合理化や諸経費の削減、人件費の削減などを重ねてまいりましたが、企業努力の限界に達し定価改定の判断に至りました。社会のデジタル化により、新聞事業を取り巻く環境は急激に厳しさを増しています」
などとして、9月27日(28日付)から駅やコンビニでの「1部売り」を150円から160円に値上げすることを発表。月額購読料も3800 円から3980円に値上げした。
日刊ゲンダイも10月25日(26日付)の社告で、11月から1部売りを150円→160円に値上げすることを発表。月額購読料も3550円から3850円に値上げするが、郵送購読料(月額3550円)と、紙面ビューアーで紙面が読めるデジタル版(同2200円)は据え置く。値上げの理由は「より一層の紙面の充実のために」と説明された。翌10月26日(27日付)の紙面では、「11月から日刊ゲンダイ さらにパワーアップ」の見出しで、新たにスタートする連載や大型企画のラインナップとして
「総力取材 岸田内閣新大臣を裸にする」
「コロナワクチン後遺症徹底検証」
「ドラフト選手家庭の事情」
「ピカソ愛弟子が見た素顔」
などが紹介されている。
夕刊フジも150円→160円で追随するかが焦点だ。
軽減税率の恩恵受けられないスポーツ紙と夕刊紙
前回の値上げは日刊ゲンダイと夕刊フジ19年4月、東スポが19年5月。3紙とも1部売りが140円→150円に値上がりした。当時の日刊ゲンダイの社告は、値上げの理由を
「新聞を取り巻く環境は年々厳しさを増し、紙面制作や販売体制を維持していくには自助努力だけでは限界となっています。とくに都内以外での配達流通費の高騰は深刻で、心苦しい値上げのお願いをさせていただくことになりました」
と説明していた。
19年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられたが、新聞業界としてのロビー活動を展開したこともあり、「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」については軽減税率が適用されて8%のままだ。その恩恵を受けられないのが、1部売りが多いスポーツ紙や夕刊紙だ。そのため、19年4~5月の値上げは、半年後の消費税率引き上げを見越した動きだとみる向きもあった。
さらにその前の値上げ(1部売り130円→140円)は、前出のとおり東スポと夕刊フジが14年4月、日刊ゲンダイが11年9月。東スポと夕刊フジは消費税率引き上げ(5%→8%)とタイミングを合わせたが、日刊ゲンダイは2年半先行して値上げに踏み切った。
14年4月に多くのスポーツ紙が値上げする中、日刊ゲンダイは当時の社告で「日刊ゲンダイはサラリーマンの味方です 4月からも定価据え置き!」とアピールしていた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)