野に身を置いた人生
60年代の後半から房総半島の海辺の町で過ごすことが増えて、メディアとの付き合いは、ごく一部の関係者に限られた。一方で、地元の漁師らとは懇意になり、漁労技術を習得、長野などの少年時代に覚えた山仕事や農作業の経験も加味し、一時はアウトドア雑誌にネーチャー生活の連載をしていた。『白土三平 フィールド・ノート』『白土三平の好奇心1 カムイの食卓』などの著書もある。
庭にはシャモやチャボを放し飼い。山で珍しいキノコを探し出し、タヌキ汁をつくる。磯ではタコやトコブシ、海で様々な魚を仕留め、すっぽん料理もお手のもの・・・狩猟採集民や海人が保持していた生きるための技術を体得し、『カムイ伝』の描写にも投影していた。作品の主人公たちと同じく、自らも徹底して、野に身を置いた人生だった。