「みな悲しんでいるので、社会貢献を」と無償で引き受ける
ボタンを作るのに、色以上に苦労したのが、その中に空洞があったことだという。
「壊れていなかった隣のボタンを送ってもらいましたが、ボタンは2部品で構成されていました。もう1つの部品を裏からボンドでくっつけていたのです。中空部分を測定して作りたかったのですが、送られたボタンのボンドを剥がせないので苦労しましたね。本業の合間にやらなければいけなかったので、1か月弱かかりましたが、本気を出せばすぐにできると思いますよ」
エッチアイ技研では、「プラスチック試作・量産のプロ」をうたっており、自動車の試作車両に使う専用部品作りを得意にしている。衝突などの実験を繰り返して早期販売につなげるため、部品を作るスピードが大事だという。金型がない古い車両の部品も小ロットで作っており、今回は、その技術を生かしたそうだ。
壊された自販機のボタンを作ろうと思ったのは、当時のニュースを昼食中に見ていたときだったと原社長は明かす。
「僕が子供のころ、父に連れて行ってもらったドライブインで、コックのおじいさんが描かれたあの自販機をよく見かけました。今でも活躍しているのは凄いと思いましたが、思い出のある自販機でしたので、心が痛みました。みなも悲しんでいるのを見て、社会貢献できたらと思ったわけです。パーツを見たら直せると思いまして、2、3日後に店に電話しました」
仕事として依頼を受ければ、20万円弱ぐらいはかかるが、今回は、無償でボタン作りを引き受けたそうだ。
「ボタンは、3つ作りましたので、残りはスペアになりますね。19日に相模原まで持って行ったら、すぐに客がハンバーガーを買ってくれたので、やってよかったとうれしかったですね」
ボタン作りについては、会社のツイッターでも、「レトロ自販機復活プロジェクト」と題して詳しく解説している。ボタンを納品した後、店の運営会社社長からハンバーガーとラムネをたくさんお土産にもらい、帰ってからみなで美味しく食べたそうだ。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)