北朝鮮の国営メディアは2021年10月20日、国防科学院が19日に新型の「潜水艦発射弾道弾」の発射試験を行ったと報じた。日本と韓国は19日午前、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の可能性がある弾道ミサイルを日本海方面に発射したと発表しており、今回の報道は両国の発表を裏づけるものだ。
ただ、日韓の発表で食い違っているのが発射されたミサイルの数だ。日本は2発、韓国は1発だと主張しており、発射から丸1日が経過しても見解は食い違ったままだ。
1発はEEZ外に、もう1発は「分析中」
北朝鮮の弾道ミサイルをめぐっては、韓国側は10月19日午前、軍合同参謀本部が「短距離弾道ミサイル1発」が発射されたと発表。日本側は、岸信夫防衛相が午前の臨時会見で
「10時15分頃北朝鮮の東側から2発の弾道ミサイルを東方向に発射し、朝鮮半島の東の日本海上に落下したものと推定される」
と発言している。防衛省の推定では、2発のうち1発は、最高高度約50キロ程度を変則軌道で約600キロ程度飛翔し、朝鮮半島東側の、日本の排他的経済水域(EEZ)外の日本海に落下。もう1発については引き続き分析中だとしていた。
岸田文雄首相は19日午後、報道陣から1発が分離して2発になった可能性について問われて、
「私は2発だと報告を受けております」
と応じ、両国の認識の食い違いが明らかになった。
韓国は発射地点、日本は着弾地点の情報が正確
韓国側は、1発だとする分析の正しさに自信を見せているようだ。ハンギョレ新聞は10月19日付けの記事で、軍合同参謀本部が日韓の認識の違いを質問されて「韓米が事前動向を注視し、韓米の情報源が1発を検知した」と答えたと報じている。同紙では、この発言を受けて「韓日の軍当局間にコミュニケーションはなく、韓国の情報分析が合っている、という意味に解釈できる」と指摘している。中央日報は「韓日は北朝鮮のミサイルの分析では、異なる特徴を持っている」として、韓国軍関係者による
「丸い地球の表面の特性上、レーダーの電波が届く距離には限界がある」
「韓国は発射地点(北朝鮮)、日本は着弾地点(太平洋など海上)に関する情報がそれぞれ相対的に正確だ」
という解説を載せている。記事には明示的に書かれているわけではないが、発射時には1発で、着弾までに分離したことを補強する説明だ。
北朝鮮側の報道では、発射されたミサイルの数に関する言及はない。ただ、5枚配信された写真からは、一度に複数のミサイルを発射する様子はうかがえない。
ただ、日本側は10月20日午前の時点でも、発射されたのは2発だとの認識を維持している。磯崎仁彦官房副長官の記者会見では、弾道ミサイルの数を確認する質問に対して、磯崎氏は次のように答弁している。
「現時点までに得られた諸情報を総合的に勘案すると、北朝鮮は昨日2発の弾道ミサイルを東方向に発射したものと分析している。北朝鮮や韓国の発表については承知しているが、いずれにせよ、詳細については引き続き分析する必要があると考えている」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)