地震が起きても「急いで避難できない」 身体障害の当事者が改めて痛感した「災害の恐怖」

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   地震で避難の必要が生じても、手足がないとすぐに動くことは難しい。20歳の時に事故で右手と両足を失い、現在YouTubeやSNSなどで障害に関する情報発信を続ける山田千紘さん(30)は、2021年10月7日夜に首都圏などを襲った地震で、「災害時における身体障害者のハンディキャップ」と向き合うことになった。

   東日本大震災以来10年ぶりに東京都区部で震度5強を観測した今回の地震。東京で1人暮らしをする山田さんは、地震災害の「備え」として何が必要だと思ったのか。本人が語った。

   【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)

  • 山田千紘さんは、自宅では車いすで過ごす
    山田千紘さんは、自宅では車いすで過ごす
  • 山田千紘さんは、自宅では車いすで過ごす

緊急時、迅速に避難できる体ではない

   7日夜の地震が起きた時、僕は東京都内の自宅にいました。友達が来ていて、テレビを見ながらのんびりしていた時のことでした。

   地震が起きて真っ先によぎったのは、「津波の心配があったらどうしよう」でした。住んでいるのがアパートの1階で、近くに大きい川もあります。津波が来たらひとたまりもありません。

   普段、外出時は義足で歩きますが、自宅では義足を外して車いすで過ごします。義足を履き、さらにズボンや靴を履くにも時間がかかります。

   だから、緊急で外に出なければならなくなったら車いすを使います。でも水の中は移動できません。泳ぐこともできません。建物の上の階へ移動することも難しいです。津波が来ることが分かっても、すぐに遠くへ移動することはできません。

   今回の地震、僕自身は幸い家が無事で、普段通りに過ごすことができました。でも、もし被害が大きくて「避難所や高台へ行け」と言われたらどうなるか。緊急時、迅速に避難できる体ではないと改めて認識しました。

   僕だけではありません。日常的に車いすで生活する人は、もしマンションに住んでいてエレベーターが止まってしまったら、きっと移動がままならなくなる。避難できても、トイレが使えないなどの不便が生じるかもしれない。目が見えない人だったら、まったく知らない避難所へ行くと、どこに何があるか分からなくて戸惑ってしまうかもしれません。

   身体障害があっても、日常生活では問題がない人も多いと思います。でも、非日常に放り込まれた時、その障害はハンディキャップとして顕在化する。障害の種類や程度によってその度合いは違いますが、災害が起きた時、困難に直面することは健常者より多いでしょう。

   僕の場合は、逃げる必要が生じても、急いで避難できない。それは大きなハンデだなと感じました。

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