「日本一高い地下鉄」さらに割高に? コロナで消えた観光需要、京都の市営交通が置かれた苦境

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   京都市交通局が経営改善策として地下鉄・市バスの運賃値上げを検討していることが2021年10月8日に報じられた。市の有識者委員会での計画案で、地下鉄運賃を30円、市バス均一区間の運賃を20円値上げすることが検討されているというものだ。

   京都市営地下鉄は初乗り運賃220円。地下鉄としては現在でも日本一高い初乗り運賃だが、検討通りの値上げとなればさらに割高な鉄道となる。

  • 写真は烏丸線の10系電車
    写真は烏丸線の10系電車
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30円値上げで初乗り250円の可能性

   烏丸線(竹田~国際会館)と東西線(六地蔵~太秦天神川)を運行する京都市営地下鉄は2019年に消費税増税に伴い初乗り運賃を210円から220円に値上げし、日本一初乗りの高い地下鉄となった。

   これに30円の値上げで250円となれば、他社との差がさらに増す。最も旅客需要の高い烏丸線の京都~烏丸御池間でも220円から250円に運賃が上がる。

   対距離運賃では京都市営地下鉄よりも高額になる鉄道はあり、千葉県の北総鉄道と東葉高速鉄道は10キロの運賃が513円(ICカード利用)になるが、京都市営地下鉄ではこの距離は現行290円となる。

   とはいえ京都市内に乗り入れる大手私鉄である阪急電鉄・京阪電鉄の初乗り運賃は160円で、また京都市内で二条~山科を地下鉄東西線で移動すると現行320円になるが、JR西日本の嵯峨野線と琵琶湖線を京都駅で乗り継ぐと200円で済む。値上げが実行された場合、他社との格差はさらに広がる。

北総鉄道は値下げの可能性も...

   地下鉄・バスともに運賃値上げを検討せざるを得ない背景は、言うまでもなく2020年以降の新型コロナによる収入減少である。

   京都市交通局では2020年度に市バス全路線が赤字に転落、地下鉄は2021年度に4年ぶりの赤字予算を計上した。観光客の需要を失った交通局の事情は厳しく、既にバス・地下鉄の一日乗車券を22年10月1日から900円から1100円に値上げし、バス一日乗車券も600円から700円に値上げしている。設備投資も烏丸線全駅へのホームドア設置計画を中断することなどを決めた。

   運賃が割高なのは前出の北総鉄道も同じだが、同線は22年秋以降に運賃値下げを検討している。沿線開発が進み、1979年の開業以降初めて累積赤字を解消できる見通しが立ったためと報じられている(21年9月27日読売新聞オンライン)。建設費償還のための高額運賃がようやく解消されるかもしれない。

   建設費がのしかかっている事情は京都市営地下鉄も同様である。1981年の開業後40年になるが、特に東西線の建設工事が計画より長引いたことによる建設費の高騰が尾を引いている。東西線の建設費は1キロあたり約330億円(2010年京都市高速鉄道事業経営健全化計画より)で、東京メトロで最も高額となった副都心線の1キロあたり約280億円と比較しても高い。

   「かつてない危機的な経営状況」と交通局が20年12月発行の経営レポートで市民に発信するほどの苦境であるが、今後旅客需要だけでどれだけ回復できるかも不透明であり、京都市は国に対しても損失補填を要望している。

【J-CASTニュース編集部 大宮 高史】

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