衆院が2021年10月14日午後に解散され、事実上の選挙戦に突入した。選挙期間中には候補者や政策課題に関する誤った情報、いわゆる「フェイクニュース」も多く拡散されるとみられ、ファクトチェックを支援する国内団体「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)が同日、「総選挙ファクトチェックプロジェクト」を立ち上げると発表した。
「日本では諸外国と比べても、ファクトチェックの質や量が不足している面がある」(楊井人文事務局長)として、検証結果を一覧できる特設サイトを公示日(19日)をめどに立ち上げたり、党首討論会の文字起こしを提供したりして、参加メディアを側面支援する。
産経新聞(大阪)や琉球新報が参加
国内メディアは伝統的に、投票行動に影響を与えかねないとして候補者や政党幹部の発言内容に反論したり、検証したりすることには慎重だった。楊井氏は逆に、
「選挙期間中に迅速なファクトチェックをするということが重要」
だと指摘している。FIJでは新たな取り組みとして、「迅速なファクトチェック」がしやすくなるように (1)党首討論の文字起こしや、出席者の事実関係に関する発言をピックアップして提供する(2)事前に各政党にプロジェクトについて告知し取材の協力を求める、といった取り組みを行う。選挙戦中盤の10月24日には、ファクトチェックに参加した記者によるオンラインイベントを開き、視聴者の意見を交えながらディスカッションを行う。
FIJが選挙に関するプロジェクトを行うのは今回が4回目で、FIJと協力関係にある「メディアパートナー」のうち、6媒体(インファクト、産経新聞(大阪社会部)、Japan In-depth(ジャパンインデプス)、バズフィード・ジャパン、琉球新報、早大ゼミのオンラインメディア『ワセッグ』)が参加する。朝日新聞や毎日新聞といった大手紙も「メディアパートナー」だが、総選挙に特化せずにファクトチェックを行っていくとして、改めてプロジェクト参加媒体として名前を連ねることは見送った。通常のファクトチェック活動の一環として、総選挙に関するファクトチェック記事が掲載される可能性はあるという。
普段よりも政治家・候補者の発言検証が増える
楊井氏によると、通常のファクトチェックはネット上の発言が検証の対象になることが多いのに対して、選挙期間中は、候補者や政治家の発言を検証する機会が増える傾向がある。例えばFIJが前回行った19年の参院選プロジェクトの際は、4媒体が9件のファクトチェック記事を掲載した。そのうち6件が政治家の発言だ。
例えば、れいわ新選組の山本太郎代表の「消費税が10%になった場合、年間で約1カ月分の所得が消えることになります」という政見放送の発言が検証の対象になった。検証記事では、さまざまな消費税の年間負担額に関する試算を紹介した上で、
「年収200万円未満の人は月収1ヶ月分以上の負担になると試算されるため、全くの誤りとは言えないが、年収200万円以上の人は月収1ヶ月分を下回る結果が出ている」 と指摘。山本氏の発言を「不正確」だと判定した。
三原じゅん子参院議員の「年金積立金の運用益は、この6年で44兆円増えました。民主党政権時代の10倍ですね」という発言も検証の対象になった。検証記事では、
「安倍政権期の累積収益を正しく算定すると39兆円で、民主党政権期と比較すると4倍強、年平均で比較すると2倍強となる。『10倍』は誇張であり、正確ではない」
だとして、やはり「不正確」だと判定している。
衆院選は10月19日に公示、31日に投開票される。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)