2021年9月30日をもって緊急事態宣言が全国で解除されたことに伴い、観光・運輸業界では需要回復への期待が高まっている。
JRではJR西日本・JR九州が破格ともいえるフリー切符を展開、JR四国もデスティネーションキャンペーンに伴って四国乗り放題の切符を発売した。
新大阪~博多往復より安くJR西日本乗り放題
JR西日本は10月8日に「JR西日本 どこでもきっぷ」「JR西日本 関西どこでもきっぷ」を発売する。いずれもフリー切符で前者はJR西日本全線と智頭急行線、後者は近畿エリアと岡山・鳥取エリアの路線が新幹線・特急も含めて乗り放題(普通車指定席利用の場合は6回まで)で、各地のサービス施設やバス・船舶の割引などの特典がついている。
最も高値の「JR西日本 どこでもきっぷ」3日間用でも大人2万2000円でJR西日本全線を乗り放題だが、これを通常運賃と比較すると山陽新幹線の新大阪~博多間の普通車自由席片道運賃が1万4750円であるから、新大阪~博多間の往復だけで元が取れてしまう。
この2つの切符は今春に発売予定で内容のアナウンスもされていたが、西日本での緊急事態宣言の延長を受け発売見合わせとなっていた「幻の切符」でもあった。
九州・四国では土日利用がお得
JR九州ではフリー切符「みんなの九州きっぷ」を10月6日に発売した。有効期間は10月9日から12月26日までの連続する土日限定で、全九州版が大人1万5000円(子ども2000円)、北部九州版が大人8000円(子ども1000円)。フリーエリアは全九州版がJR九州全線、北部九州版が豊肥本線以北の福岡・熊本・大分・佐賀・長崎のエリアのJR九州全線となっている。いずれも新幹線・特急も乗車可能だ(普通車指定席利用は6回まで)。こちらは20年7月から9月までの期間限定で販売されていたが、好評につき21年3月まで期間が延長されていた。
JR四国では10月1日から12月31日まで四国デスティネーションキャンペーンが行われているのに合わせ、9月22日から「四国DC満喫きっぷ」を販売中だ。JR四国と土佐くろしお鉄道全線を、特急の普通車自由席も含めて土・日・祝日を含む連続3日間乗り放題となる。紙の切符では大人1万円だが、アプリ「しこくるり」「setowa」で購入すると9000円とチケットレス化にも一役買っていて、同じ条件の「四国フリーきっぷ」(1万6440円)よりも大幅にお得になっている。
2021年はお盆の最繁忙期でも指定席利用がコロナ以前の19年比で24%に落ち込んだJR各社にとって、収益の回復は喫緊の課題である。緊急事態宣言期間中運休していた各社の観光列車も運転を再開し、ビジネス需要を持つJR東日本・JR東海では新幹線テレワークを推進しているが、関西北陸以西のエリアではフリー切符の充実ぶりが顕著だ。