岸田文雄首相が2021年10月4日、首相就任後初の記者会見を開いた。
菅義偉前首相の記者会見では、質問と答えがかみ合わない場面も目立ち、国民とのコミュニケーション不全の象徴でもあった。「納得感」を重視する岸田氏の記者会見では、それがどう変わったのか。
菅元首相「どうしたら国民に言葉が届くのか、もう一度一からやり直さないと」
菅氏も、自らの記者会見に課題があることは認識していた。「文藝春秋」10月号のインタビューでは、「言葉が響かない」「聞かれたことに答えていない」などの声が出ている、という質問に対して、次のように反省の弁を述べている。
「結果を残せばわかってもらえるという政治姿勢で今までずっと来たので、そういう考えが会見の姿勢に出てしまっているのかもしれません」
「どうしたら国民に言葉が届くのか、もう一度一からやり直さないといけないと感じています」
インタビューが行われたのは8月末。そのまま「やり直す」機会がないまま、9月に入って総裁選出馬断念を表明した。9月28日に行われた最後の正式な記者会見でも、やり取りがかみ合わない部分は残った。
例えば、臨時国会の召集時期に関するやり取りだ。野党は7月16日、憲法53条を根拠に新型コロナウイルス対策を議論する臨時国会の早期召集を求める要求書を大島理森衆院議長に提出したが、菅内閣が実際に召集したのは10月4日だった。現行憲法では召集の期限は定められていないことが一因だが、自民党が12年に発表した改憲草案では「要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない」とうたっている。こういった経緯を踏まえた
「憲法上の義務として指示を出せばよかったのだと思うが、なぜなかなか速やかに召集を指示できなかったのか」
という質問には次のように応じ、「速やかに召集しなかった理由」は明らかにならなかった。
「召集については、これは政府が決めるわけだが、党と相談をしながら様々な政治日程の中で相談をして決めさせていただく。そういう中で10月の4日の召集を決定しているということだ」