真っ赤なトマトの底の部分から、小さな緑色の実のようなものが飛び出している。これは「出べそ」と呼ばれるトマトの生理障害で、品質には問題はないものの、その見た目から捨てられてしまうことが多いとされる。
確かに緑色の部分がまるで目玉のようなビジュアルで、おどろおどろしい雰囲気を放っている。新潟市内のトマト農園・曽我農園は、こうしたトマトにユニークな名前を付けて販売。SNS上で注目を集めている。
「出べそは生きるためにトマトからあふれ出る命の証」
農園代表の曽我新一さんは、出べそ状のトマトに「とまとの輝き」と名付けた。紹介ポップにはこのような説明を記している。
「昔から『出べそ』と呼んできた生理障害。夏の極端な暑さなどが原因で出てしまいます。見た目がアレなので捨てられてきました。悪い組織の実験体みたいで、悲しい運命ですよね!」
説明の下部には、「ベテ・・・タベテ・・・・・・・」と訴えるトマトのイラストが添えられている。
J-CASTニュースの2021年10月4日の取材に、曽我さんは名前の由来をこう述べる。
「生産者としてはただの生理障害とわかっていても、消費者の方は気味が悪いというイメージしかないと思います。私は、出べそは生きるためにトマトからあふれ出る命の証と思っています。『いのちの輝き』を見たときこれだ!と思ってオマージュさせていただきました。またちょっとクスッとしてもらえればと思い、ああいうポップになりました」
2025年に開催予定の大阪・関西万博(以下、大阪万博)のロゴマーク「いのちの輝き」をオマージュしたという。このロゴは、赤くて丸い細胞のようなものに目玉がついているというデザインで、インターネット上で奇抜だと注目を集めた。
「とまとの輝き」を紹介した曽我農園のツイートには、出べそ状のトマトを環状に並べた写真も添付されており、色や形が「いのちの輝き」のように見える。このツイートには、約4000件の「いいね」が寄せられる反響があり、「とまとの輝きは草」「この邪神のトマト欲しい」といった声が寄せられた。
「食べ物には規格外が必ずある」
曽我さんによれば、「出べそ」は夏に栽培する作型でよく出る生理障害で、夏の高温などが原因でできてしまう。症状がひどいものは果実の中に芯が残ることもあるが、味については通常のものと全く変わらないという。
しかしこうしたトマトは、誤解を受けてしまうこともあった。2011年3月11日に発生した東日本大震災の後、「放射能の影響ではないか」といった声が広がったのだ。曽我さんは、「そういうデマが広まらないように、食べ物には規格外が必ずあるということを知っていただけたら」と訴えた。
曽我農園では、このようなB品、規格外品、形の面白いトマトを大切にするという方針をとっている。以前にも、品質には問題がないのだが、一部が黒く変色してしまう「尻腐れ」という生理障害のトマトを、「闇落ちトマト」と名付け、大きな注目を集めた。
曽我さんは、「既存の流通インフラや量販店の存在に感謝しつつ、個性的な形を楽しむ余裕があると良いですね」と述べる。
「トマトに限らず野菜の規格外品というのは一定数出てしまうものです。一般流通や量販店はとても便利ですが、消費者の方は個性的な形の野菜を見る機会が少なくなったとも言えます。単純にこういう野菜があることも知っていただき楽しんで貰えれば嬉しいです」
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)
見た目エグいですが緑の部分を切り落とせば問題なく食べられます。私の一推し。 pic.twitter.com/Iv62WBHXUx
— フルーツトマトの曽我農園 (@pasmal0220) October 2, 2021