「もし自分が親なら、その子がどうなれば自分は安心するだろうか」
親の嫌いなところはたくさんあったけど、子どもの頃から「親にもらった体は大事にしたい」と思っていました。20歳の時に事故で急に手足を3本切断することになって、「取り返しのつかないことをした」と思いました。入院先の病院のベッドで、障害者年金が下りないことも知りました。事故の前には大学も1年で中退していました。お金の面でもたくさん苦労をかけました。
20年間育てた子どもが、ようやく親元を離れると思ったら、手足がなくなった。「もし自分が親なら、その子がどうなれば自分は安心するだろうか」と入院中ずっと考えていました。その答えは「自立する姿を見せる」ということでした。障害があろうがなかろうが、友達と遊んで、好きな人と結婚して、子どもを産んで、そんな人生を歩めたらいいなと。だから、退院したら1人暮らしをすると決めていました。
親の嫌いなところは変わらずあるけど、それ以上に感謝の気持ちに気付きました。親が生きている間はできるだけ返せるように、それもお金でなく、行動で返せるようにしたいと思うようになりました。それから9年間、自立の決意と感謝の気持ちは、変わらず持ち続けています。
自分ができる恩返しは、親が生きているうちいろんな「景色」を見せてあげること。自分が成長することも、家庭を見せることもそう。僕が目標にしている「モチベーショナル・スピーカー」になって、いろんな人に向かって講演している姿も見せられていない。まだまだ新しい景色はたくさんあります。そう考えると、逆に僕自身も1日1日の時間を大事にしないといけないと強く思えます。
親が死んでから「あの時もっと伝えておけば」と後悔しても遅いので、「感謝は出し惜しみないように」と思っています。常に感謝の心があれば、それを伝える言葉は自然に出てくると感じています。