手足3本失って抱いた「感謝の心」 「出し惜しみはしない」両親への手紙を公開した理由

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   家族、恋人、友達。大切な人への「感謝の気持ち」はあっても、直接伝えるのはどこか気恥ずかしい。まして今は新型コロナウイルスの影響で会うこともままならない――。そんな人も少なくないかもしれない。

   20歳の時に事故で手足を3本失った山田千紘さんは2021年9月23日、節目の30歳の誕生日を迎えるにあたり、両親へ感謝の手紙を書いた。それも、内容を自ら読み上げた動画をYouTubeに公開している。「感謝の出し惜しみはしない」という山田さん。背景にある思いを本人が語った。

   【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)

  • 山田千紘さん
    山田千紘さん
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僕は優等生でもないし孝行息子でもない

   親にはいつも「ありがとう」と言っているけど、30歳という節目で改めてちゃんと伝えようと思って、これまでの感謝とこれからの決意を手紙に書きました。YouTubeの動画で読み上げたのは、これを見た人が同じ思いを持って、同じように行動してくれたらいいなと思ったからでした。

   最近、親父のためにエアコンを買いました。実家のエアコンが8月上旬に壊れたと聞いて、親父は「いらない」と言っていたけど、一番暑い時期だったからすぐに貯金を切り崩しました。

   親父は3月に、敗血症性ショックで倒れていました。病院からは当時「2~3日がヤマだ」と言われました。新型コロナウイルスの影響で面会もできない。もう二度と会えないまま死ぬかもしれませんでした。「もっとあの時の感謝を伝えていれば」と一気に焦りに駆られました。

   幸い親父の手術は成功しました。1か月くらいで退院し、今も自宅で暮らしています。でも、いつ誰がどうなるか分からないと改めて突き付けられました。僕も9年前に事故に遭いました。突然命を失うことは、いつだってあり得ると思います。

   別に親が大好きなわけではないです。不満も嫌いなところもたくさんある。僕は優等生でもないし孝行息子でもない。10代の頃なんかは、親は僕に対して強く言いづらかったと思います。僕がキレるから。

   でも今、感謝の気持ちは揺るぎない。自分がこうして暮らせているのは誰のおかげか、それは両親だと心から分かっているからです。

   この体になってから気付いたのは、周囲の人への感謝でした。いろんな人のおかげで自分は成り立っている。さらに原点まで立ち返ると、両親がいないと自分は生まれていない。そのスタートラインへの感謝の気持ちを忘れてはいけないと思うようになりました。

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