自民党の岸田文雄新総裁は総裁選の公約で「新自由主義からの転換」を掲げ、「令和版所得倍増」の一環として「中間層復活」を訴えた。これらの政策は、一見すると野党が訴えている政策と似ており、2021年10月1日に行われた立憲民主党の枝野幸男代表の記者会見では、「野党の政策を与党がパクる」状況について見解を問う声も出た。
枝野氏いわく、「全然パクれてないでしょう」。「再分配」を掲げる枝野氏と岸田氏の政策は、どこが違うのか。
「野党の政策を取り入れる自民党おなじみのテンプレート」
再分配を強調する岸田氏の政策をめぐっては、米ニューヨーク・タイムズ紙が
「野党が最初に打ち出した政策を取り入れることに長けている、自民党のおなじみのテンプレートに従っている」
と9月29日付け(米東部時間)の記事で論評している。枝野氏の会見では、記者が記事を引用しながら
「野党の政策を与党がパクる、というのは海外から見てもおなじみの光景」
だとして、「野党の政策を与党がパクる」ことに対する見解を尋ねる質問が出た。
枝野氏は次のように話し、岸田氏の政策は立憲の立場とは似て非なるものだと主張した。
「全然パクれてないでしょう。言葉遣いを、ちょっと似たような言葉を使っているだけ。一番の根本はアベノミクスを否定できないということは、経済運営は何も変わらない。これは間違いだった、少なくとも効果を呼ばなかった、という前提に立って始めて、何を変えるのかということがはっきりするので、アベノミクスを前提にしながら何をやっても、基本は変わらない、ということだ」
「富裕層や超大企業に対する増税を、明確にお示しになれるのか」
具体的な違いとして、岸田氏が「成長の果実を分配する」ことを打ち出しているのに対して、立憲は「分配なくして成長なし」を訴えていることを指摘。「あくまでも分配がないから成長していない、ということを明確に認められるのかどうか」という点について、岸田氏に認識をただしたい考えだ。さらに、「富裕層や超大企業に対する増税を、明確にお示しになれるのか」とも話し、違いを見極めたい考えだ。枝野氏としては、岸田氏は首相就任後の初心表明演説で、この課税の問題を曖昧にするとみており、「その曖昧さを明確にしていきたい」としている。
なお、岸田氏は9月9日のJ-CASTニュースのインタビューで、野党が「新自由主義」を批判し、特にかつての民主党が「分厚い中間層」を主張してきたことについて、「民主党がパクッたんです」と話している。これらの言葉は、自らが率いる宏池会(岸田派)が昭和30~40年代に「一生懸命訴えていたワード」で、旧民主党のアピールを「我々宏池会としては複雑な思いで見ていた」としていた。
今回の枝野氏の会見は、立憲の衆院選向け公約の第7弾にあたる、エネルギー分野の政策発表のために開かれた。「自然エネルギー立国の実現」を掲げ、(1)原発に依存しないカーボンニュートラル(2)エネルギー活用効率の最大化(3)多種多様な第1次産業を支える経営安定策の充実、の3つの柱を掲げた。(1)では、原発の新増設は認めず、再生可能エネルギー電力の割合を30年に50%、50年に100%を目指すことをうたっている。再稼働については明記していないが、3月30日に定めた「基本政策」も公約として位置づけており、その中に
「東京電力福島第一原子力発電所事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意がないままの原子力発電所の再稼働は認めません」
という記述がある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)