新型コロナウイルス対策で発令されていた緊急事態宣言と、まん延防止等重点措置が2021年10月1日に解除されたことを受け、国内線の航空需要が急回復している。全日空(ANA)の井上慎一専務執行役員が羽田空港で報道陣の取材に応じ、明らかにした。
ちょうど1年前の20年10月1日には観光支援事業「GoToトラベル」の対象地域に東京都が加わり、旅行者が急増した。GoToトラベルは20年12月28日から停止されたままだが、ワクチン接種が進んだことで、1年前に迫る水準まで需要が回復している。ワクチン接種をした人や陰性証明を持った人へのキャンペーンを展開し、さらに需要を下支えしたい考えだ。
「GoToトラベル」東京で始まった1年前の8割の水準
井上氏によると、10月に運航される便の累計予約状況は8月中は横ばいで、新規の予約があまり入らない状況だった。それが9月に入ってから増加傾向になり、9月中旬以降、特に九州・北海道方面の予約が伸びている。さらに、10月運航分の新規予約数で見ると、9月前半には1日あたり約5000人分の予約が入っていたが、9月末には1日に5万人分の予約が入った。
緊急事態宣言や重点措置がどの地域にも出ていないのは、21年4月4日以来、約半年ぶり。井上氏は、この予約状況について「まさに、お客さまの移動に対する期待を表すものとして、私たちもしっかりと受け止めている」と話した。
今週末(10月1~3日)には約11万人分の予約が入っている。緊急事態宣言期間中の9月3~5日と比べると15%多く、観光支援事業「GoToトラベル」が行われていた20年の同時期に比べると20%少ない水準だ。
仮に「GoToトラベル」が再開されれば、ワクチン接種との相乗効果で「期待は大きい」(井上氏)。ただ、こういった需要喚起策は確実な感染予防策が前提になるとの見方だ。
「感染予防の大前提は崩さずにやることが大事。昨年度も結局感染者が増えて途中で...(中断した)という話になった。ならないようにすることが業界全体、日本全体の利益につながる。航空業界のみならず観光業界の皆様を巻き込みながら、全体として感染防止の環境を整えていくことが同時に必要なのではないか」