さいたま市内のJR大宮駅前にある居酒屋が、新型コロナウイルスの感染対策をめぐる埼玉県の要請に不満をつづった「閉店」の貼り紙を出し、ツイッターで反響を呼んでいる。
県は、この居酒屋がお酒を提供していたため、休業を要請していた。店の貼り紙では、県は酒の提供イコール陽性者の増加という考え方をしているなどとして、「納得できなません」と訴えている。
「酒の提供イコール陽性者の増加という考え方であり、納得できない」
「閉店のお知らせ」。こんなタイトルを付けた貼り紙は、この居酒屋の降ろしたシャッターに掲示された。冒頭で「埼玉県の要請により閉店(休業)いたします」と記し、その理由などを詳しく書いている。
貼り紙では、大宮駅近隣では、いくつかの別の店から陽性者が続出し、クラスターも発生しており、いずれの店も感染対策が甘かったと考えられると指摘した。これに対し、店では、2020年から営業時間の短縮やマスク着用の徹底などを行い、従業員のPCR検査やワクチン接種も進めるなど、感染対策を進めてきた。その結果、店からは、コロナ陽性者が1人も出ていないという。
それにもかかわらず、県は、この店がお酒を提供していることを理由に、「閉店の命令を予告」してきたとし、酒の提供イコール陽性者の増加という考え方であり、納得できないと不満を述べた。陽性者を出さないのが本来の目的であるはずで、一部の店をスケープゴートにするのは、本末転倒だと訴え、陽性者を出した店の名前を公表し、2~3週間の営業停止にすべきではないかと持論をぶつけた。
ただ、日本は法治国家であるため、「県の命令に従い閉店します」とした。これ以上の説明が必要なときは、県の危機管理課に問い合わせてほしいとし、連絡先も付記してあった。
貼り紙の写真は、2021年9月27日にツイッター上で次々に投稿され、様々な意見が書き込まれている。戦後まもなく創業したという地元の名物居酒屋だけに、「閉店は悲しい」「かなりショック」「再開を望みたい」といった声も相次いでいる。
県は「閉店の要請」を否定
この居酒屋にどんな要請をしたかについて、埼玉県の危機管理課は9月28日、J-CASTニュースの取材にこう答えた。
「お酒の提供を把握しましたので、その場合は休業するようにお願いしたのは事実です。どのお店にも、お酒を提供したりカラオケの設備があったりするときは休業を、そうでなければ時短営業を要請しています。このお店だけ、閉店を求めるような違う要請をしたのではありません。手続きを進める中で、応じられないときの休業命令は予告しましたが、協力していただけることになり、感謝しています。貼り紙にある閉店とは、店を辞めてしまうという意味ではないと思っています」
同課では、前日の27日はこの居酒屋が休業していたのは確認したという。
県が休業などを要請しているのは、緊急事態宣言が出ている30日までだ。宣言がもし延長されれば要請が続くとし、解除されれば、10月から別の要請になる可能性があるが、まだ決まっていないとしている。
陽性者を出した店の名前を公表し、2~3週間の営業停止にすべきだとした居酒屋の主張については、「コロナ特措法には規定されておらず、どちらも行うのは厳しいです」と説明した。
貼り紙で同課の連絡先を書いたため、「閉店させたのか」といった問い合わせが数件ほど来ているとして、困惑しているとも明かした。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)