俳優の吉沢亮さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「青天を衝け」第28話が、2021年9月26日に放送された。これまで仕えてきた俳優の草彅剛さん演じる江戸幕府15代将軍・徳川慶喜との別れが描かれ、切ない展開に視聴者の多くが感涙にむせぶこととなったようだ。
憎むべき新政府からスカウトを受ける栄一
大河ドラマ60作目。主人公は「日本資本主義の父」こと新一万円札の顔としても注目される実業家・渋沢栄一(吉沢さん)で、2015年後期朝ドラ「あさが来た」で知られる脚本家・大森美香さんのオリジナル作品となる。幕末から明治と、時代の大渦に翻弄され挫折を繰り返しながらも、近代日本のあるべき姿を追い続けた生涯をエネルギッシュに描く。
第28話で、新政府から大蔵省の出仕を求められた栄一。新政府といえば、いわば徳川を倒した憎き敵であることから、栄一は出仕の申し出を断るため、東京にいる大隈重信(大倉孝二さん)のもとを訪れる。しかし大隈から、これから自分たちの手で新しい世を作っていかなければならないこと、そのためには栄一の力が必要だと力説される。その言葉は、世の中の仕組みを変えたいと幼いころから願ってきた栄一の心を揺らがせてしまう。
慶喜との涙の別れ... 「エモい脚本」「神構成」
栄一はこのやりとりを慶喜に報告し、「新政府が転覆したときにこそ、我らで新しい日本を守るべきだと存じます」「あなたこそ朝廷や大名たちをまとめ、新しい日本を作るべきだったんです」と進言するが、慶喜は「行きたいと思っておるのであろう。日本のためその腕を振るいたい、と」と栄一の心の内を読む。そして、「ならば私のことは忘れよ」「これが最後の命だ。渋沢、この先は日本のために尽くせ」と命令をくだし、主従関係を解消。栄一は目を潤ませながら「今までありがとうございました」と深々と頭を下げて感謝し、慶喜は「大儀であった。息災を祈る」と労いの言葉をかけるのだった。
栄一を温かく新政府へ送りだした慶喜の切ない思いや、栄一と慶喜が初めて出会った第1話の回想シーンが流れるといった演出がなされたことに対し、視聴者からは
「栄一を手離してやろうとする慶喜様も器がでかいなぁ。気心の知れた家臣は手元に欲しいだろうに」
「慶喜は何もかもお見通しなんだな 自分の力量もよくわかってるし、栄一が本当は何を望んでいるのかもわかってる」
「篤大夫が栄一の名に戻るのが、まさか慶喜様の前だなんて思わなかった。それが1話の冒頭の伏線回収で、なんってエモい脚本なんだろうと思って泣いちゃったよ」
「今回も草彅慶喜公に泣かされた。 栄一を手放さねばと決めた淋しそうな顔、日本のために尽くせと命じた時は、思いやりに溢れた顔。 上様ならば出来たはずと言われた時の、少しの無念さを感じさせる顔...」
「神構成じゃない!??」
などと感動する声が多くあがっている。