東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式で注目を集めた楽曲が「マツケンサンバ」である。松平健さんの「マツケンサンバⅡ」のメロディーにのせて派手な演出を期待する日本人は少なくなかった。
ところがこの「マツケンサンバ」、厳密な音楽ジャンルはサンバではない。識者によれば、本来のサンバには程遠いという。「お嫁サンバ」「てんとう虫のサンバ」といった歌謡曲も同様だ。
サンバではないのに「サンバ」と名がつく曲をなぜ日本人は好んできたのか。南米ブラジルからもたらされたサンバが邦楽とミックスし進化した歴史をたどった。
サンバにボンゴは使わない!?
「マツケンサンバⅠ」から4作作られている松平さんの「マツケンサンバ」シリーズのうち、最もヒットしたのが「マツケンサンバⅡ」である。だが、この曲をめぐっては、「サンバではない」との指摘がしばしば出る。
音楽プロデューサーのヒャダインさんも、雑誌「non-no」の連載記事などで、
・歌詞に『叩けボンゴ』とあるがサンバでボンゴは使わない
・(曲中に出てくる)「オレ!」の掛け声はフラメンコ
などと指摘している。
確かに、サンバカーニバルでの音楽とマツケンサンバⅡは明らかに異なる印象を受ける。作曲の宮川彬良さんも2021年9月5日のツイッターで
「ボンゴはアフリカの楽器なのでサンバには使わない、そりゃそうだ。マツケンサンバⅡでもコンガは使っていますが、ボンゴは使っていません。歌詞にあるだけです。でももし歌詞が『叩けコンガ』だったら、きっと違うメロディーになっていた、と思います」
と発信している。
さらに「マツケンサンバ」シリーズ第4作の「マツケンサンバ4~情熱のサルサ〜」に至っては、タイトルに「サルサ」とついている。