立憲民主党は2021年9月24日、次期衆院選に向けた外交・安全保障分野の公約を発表した。立憲の公約発表としては今回が第5弾で、「平和を守るための現実的外交」をうたっている。ただ、これまでの公約発表で登場してきた「自民党では実現しなかった」という枕ことばは姿を消した。枝野幸男代表によると「外交・安全保障には継続性が重要だという側面もある」ためだ。
「継続性」の例外だと言えそうなのが、在日米軍基地への対応、特に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設問題で、「辺野古新基地建設を中止」することを打ち出した点だ。辺野古問題をめぐっては、旧民主党の鳩山政権で「最低でも県外移設」の公約を掲げ、結局は辺野古に回帰したことで沖縄県民を失望させ、米国との信頼関係を損ねた経緯がある。枝野氏は、辺野古に代わる普天間の代替地については言及を避けた。さらに、(1)米軍のプレゼンスに対する重要性を認識している(2)時間をかけて粘り強く交渉する、という姿勢を示すことで「日米同盟に影響を与えることはないと思っている」としており、旧民主党政権の轍を踏むことは避けたい考えだ。
「抑止力にマイナスな影響を与えることなく現実的な解決を図る」
枝野氏は公約の位置づけについて
「外交・安全保障には継続性が重要だという側面もある。むしろ、安倍・菅政権の9年近くの間に壊されてきたものを、従来の我が国の外交・安全保障の王道に戻すという側面も含まれている」
などと説明。(1)健全な日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障政策(2)地球規模の課題への積極的な取り組み(3)対等で建設的な日米関係(4)経済安全保障・食の安全保障の確立、の4つを柱に据えた。(1)では日米同盟が基軸だという点は維持しながら、尖閣防衛を視野に、領域警備と海上保安庁体制強化の法整備を進めることをうたった。在日米軍基地問題が盛り込まれているのは(3)で、
「沖縄県民の民意を尊重して辺野古新基地建設を中止し、沖縄における基地のあり方を見直すための交渉を開始する」
「抑止力を維持しつつ、米軍基地の負担軽減や日米地位協定の改定を進める」
の2点を掲げている。
枝野氏は次のように話し、先行して辺野古の工事を中止し、その上で、普天間の代替施設について米国と協議を進める考えを示した。
「いったん工事を止めることは国内問題だと思っているので、工事を止める。その上で、普天間の危険除去のためには、相当な時間がかかることを覚悟しているが、粘り強く米国と交渉していく。米国、あるいは我が国の抑止力にマイナスな影響を与えることなく現実的な解決を図ることは、粘り強い交渉の中で可能だと思う」
普天間の代替地「初めから結論ありきで私が申し上げれば交渉にはならない」
具体的な辺野古の代替案については、普天間を本拠地にする海兵隊を取り巻く環境が変化していることを理由に、言及しなかった。
「この地域(アジア・太平洋地域)に、米海兵隊の機能が、どういう役割で必要なのか、そしてそのためには、我が国の領土の中にどういう機能が必要なのか。そこを一からしっかりと議論することで、解決策を図っていく。したがって、これは米国の世界戦略にも影響することで、初めから結論ありきで私が申し上げれば交渉にはならない」
枝野氏が「結論ありき」を避けた背景には、旧民主党が、実現可能性が不明な状態で「最低でも県外移設」を掲げて失敗したことの教訓があるとみられる。枝野氏は、(1)米軍のアジア・太平洋地域におけるプレゼンスの重要性についての認識は従来の日本政府の認識と同じで、この考え方は米国臨時代理大使にも伝えてある(2)米国側も辺野古の実現性には疑問を持っており、仮に完成したとしても相当先になるという認識を持っている、ことを理由に
「基本姿勢が揺らがないということと、粘り強い時間をかけた交渉をする、という姿勢であれば、日米同盟に影響を与えることはないと思っている」
と述べた。
枝野氏は、移設に向けたスケジュールについて言及していない。21年6月のJ-CASTニュースのインタビューでも
「何よりも、期限を切ってはいけません。相手があることですから。相手(米国)とも合意の上で進めなくてはいけないことです」
と話していた。ただ、次のようにも話し、24年の大統領選に出馬が取り沙汰されるトランプ前大統領が復権するまでに筋道をつける必要があるとの考えを示している。
「1年や2年じゃ結論出ません。ただし、バイデン政権の間にやりたいですね。予見可能性がないトランプ政権ではできなかった。(海兵隊を)引き上げるって言いかねませんから、トランプ政権は」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)